内容説明
尻野浦小学校には、杏奈先生と飛鷹かおるという生徒、そして英語まじりで話をする校長先生がいるばかり。そう、ここは海沿いの限界集落。残りの住人はかおるの父とかおるの兄だけ。そこにある日、山向こうの「ガイコツジン」集落から、エトーくんがやってきて――。それぞれの人生を抱え、集まった人たちの濃密な関係が織りなす、風変わりな家族の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
(C17H26O4)
83
「限界はとっくのとうに突き抜けて、廃墟と化した集落」「入り組んだ海岸線に囲まれた湾の先には、小さな島がひとつ浮かんでいた。その島を奪い取ろうと、たがいに先を争って緑の山々が雪崩れ込んでいた」「ぼく、だいじょうぶです?」「ぼく、からっぽです?」「からっぽでいいのよ。こころはものすごく大きなものだから、世界だって入っちゃうのよ。それもたくさん」「心配は、ファイブ、シックス、フォー」「世界がバランスを保つためには子供は笑い続けなければならない」2019/11/22
翔亀
41
この作家の「九年前の祈り」の<故郷の包容力>とでもいうべき描写が気に入ったので、遡って読む。芥川賞受賞の3年前の作品(2011年)。これも故郷の大分の漁村が舞台。限界集落だ。全国各地で限界集落となり、廃村となっている集落は多い。そうとなれば、滅びゆく美でも語られるのかと思いきや、意表を衝かれた。登場する人間たちは、限界集落に残された唯一の家族は血縁関係になく(虐待児の里親)、小学校に赴任した主人公もその校長も免許のない似非教師、そして棲みついた正体不明の外国人(この著者の特有の用法「ガイコツジン」)。↓2021/04/28
ちえ
36
読みながらその土地、地形が浮かんでくるようだった。たった5人の限界集落。杏奈先生、校長先生、生徒のかおるの一家は父、兄共に全く血がつながっていない。山の向こうの「ガイコツジン」集落から通ってくるエトー君。つかみどころがない話に戸惑ったが、読み進めるうちに少しずつ明らかになるそれぞれの抱えている痛みや悲しみ。あまりにも切ない終わりに、違う終わり方を求めて何度も読み返してしまったが悲劇に感じさせず優しく感じるのが不思議だ。西加奈子さんの解説を読んでなるほどと理解できたことも多かったな。2019/10/25
はらぺこ
30
校長先生がスベってるからか読み難い。何が何やらサッパリ分かりませんでした。謎だらけです。2017/02/18
ω
29
不思議なファンタジー(●︎´ω`●︎) 小野先生の芥川賞受賞作はまだ拝読していませんが、何となく手に取ったこの本。作中では語り尽くせないほどの哀しみを抱いたと想像される小学生のかおるちゃんとエトーくん。 限界集落での息詰まる暮らしと旅立ち、というところでしょうか。読了後、皆が後悔を抱えそうでありながら前に進めそうな、しっくりと腑に落ちないながらも染み渡る作品でしたω 2020/01/04