内容説明
札幌医科大学で学び、心臓移植問題を機に、整形外科医から文学の道へ進み、昭和・平成の時代、第一線の作家として活躍した渡辺淳一。谷崎・川端も書けなかった人間の《生》と《性》の本質を、自らの体験を冷徹に描くことで、文学の高みに到達した――。編集者として直木賞受賞の布石となる『花埋み』を書かせ、後に評論家として数々の名著を刊行する著者が、渡辺文学の全てを網羅する評伝決定版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こういち
10
自らの生き様を歴史に刻んだ「渡辺淳一」。卓越した視点と表現力は多くの読み手を魅了した。医術を司る側と受け入れる側、それぞれのココロの葛藤は、〝生〟というものの尊厳と儚さを教えてくれた。また、男と女の繊細なココロの機微を艶やかに、必ず訪れる別れを恐れず、妥協することを許さない美の極致に誘ってくれた。思えば、奏でるような流麗な文章は、四季折々の日本文化の情緒に溢れ、〝もののあわれ〟が見事に咲き誇っていた。天賦の才は静かに時を止め、伝説の人となった。2015/04/10
見ぇーた
0
「渡辺淳一の世界」に加筆改題したもの。後半は書誌・年譜だが、相当の詳しさ。実名入りの女性遍歴とその題名があり、この本を参考にそれらの本を読むと面白い。また、「告白的恋愛論」(のちに「わたしのなかの女性たち」角川文庫)を読むのも偽名などが分かってまた面白い。2024/09/07