内容説明
北斎の生涯を描いた時代ロマン小説の傑作。
人々の生活を見つめ、大いなる自然を見つめ、その感動を絵にした男・葛飾北斎。妻・お砂との運命的な出会い、写楽、馬琴、蔦屋重三郎らとの交流を通じて画家として人間として成長していく姿を瑞々しいタッチで描く。
下巻では、画家として驚異的なほど活躍期間が長く、長命だった北斎の老年期の課題、晩年の老化との飽くなき戦いが展開される。
東洲斎写楽、お砂との死別により、悲嘆にくれる晩年の北斎だが、さらに、歌川広重の登場で、人気に翳りが出て、人気作家の晩年の悲哀を情感豊かに綴る。北斎を喝采と共に受け入れた時代が、やがて北斎を残して先へ進んで行ってしまうが……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
onasu
9
最近の北斎周りの作品を読んでいる身には、どうにも頭を傾げるところが多かったが、小説と冠しているし、北斎の暮らしなど詳細は分からない。とは言え、若い頃から後の写楽と交友があり、競い合っていたとするのは…、なんだが、これが北斎の絵の上達を著すのに芯を食っているのだから心憎い。 弟子の面々、お栄の姿が後半の一部にしか現れない(著者のことわりあり)等々、期待したものはなかったが、読みものとしては充分。ただ、話しとしては、上り調子一方の上巻の方がおもしろく、上巻のみで打ち止めでもよかったか。2021/11/11
NICK6
6
この小説では、北斎のライバルは写楽である。北斎は冷静で、喧嘩も芸術論もむやみやたらに吹っ掛けない。吹っ掛けるのはどちらかといえば北斎。それも、なんと!自分を貶めるために、写楽に立ち向かっていく感じなのでかなりヘンテコである。さらにだ。北斎は写楽を絶大に評価するが、それを写楽自身が受け入れないとそこで又、妙な感じに議論をぶつ。その繰り返しが強烈に面白くてしょうがない。そして年上女房の、お砂!。時々、北斎のために、しみじみ涙を流す。瞬間の心持ちが浮かび上がってくる語りのなんと粋な事か!もう、お砂サイコー 2024/08/16
ryohey_novels
5
古い作品ではあるが最後まで語り口に慣れず。他の感想にもあったが私の知っている俄か知識でも史実と相反すると分かる箇所があり、歴史小説というよりは歴史をベースにしたロマン小説といった感じ。写楽との友情などは結構好きだったが、お砂や写楽が亡くなって以降は小説自体も軸を失っていったかのよう。北斎は晩年に魅力が詰まっているはずだが、最後も尻切れ。2022/11/27
もだんたいむす
2
かるーく読める娯楽小説。小難しくなく、スラスラ読める。ただ、山も谷もない平地的なストーリーなのでちょっと退屈。★★★☆☆2015/09/02
Hiroshi
2
醜いものを見つけ出す写楽に対し、普通のものから美しさを見いだす北斎。正反対の価値観だが2人は仲が良い。11代将軍家斉に谷文晁とともに招かれ御前で絵を描くことに。追加の所望を受け、鶏の足裏に絵の具を付けて竜田川を描き、拍手を受けた。写楽のうまさに圧倒されていた北斎は匠気で自分を出すことに。北斎は江戸の誇りになった。写楽や嫁に先立たれて辛かったが、冨嶽三十六景・百物語・諸国滝廻り等を出し続けた。広重・国貞・国芳ら若手が出てきたが、北斎は最後まで第一人者だった。老いを知らない北斎であり、力一杯の仕事をしていた。2015/08/08