内容説明
自殺未遂したと噂される女友達の見舞いに行き、思わぬ恋の顛末を聞く表題作や「トイレの懺悔室」など、四つの世にも奇妙な物語。「ほとんど私の理想そのものの「怖い話」なのである。――森見登美彦氏」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
162
『憤死とはどのような死に方だろう』と考えを巡らせる主人公。そんな主人公の身近に起こったある出来事をきっかけに『憤死』という言葉の意味を感じ入るその結末。そんな長短が極端な4編の作品から構成されるこの作品。人生の奥深さを感じる豊潤な余韻が残るこの作品。読書の短い時間の中でいろんなことを考えさせてくれたこの作品。それは、人生ってそうだね、そうだよね、そんなものかもしれないね、という思いに包まれるその作品世界。「憤死」という一見ギョッ!とする書名の中に綴られる、とても印象深く、そして読み応えのある逸品でした。 2021/02/09
mukimi
139
可愛らしい表紙からは想像できない、背筋が寒くなる世にも奇妙な物語。綿矢さんこの手の怖い話も書けるのね...ぞくぞくさせてもらった。怖い話は後味が悪いので絶対に読まない領域だったけれど、これだけの文章のうまさと、いちいち頷かされる心理描写、嘆息するような人生真理の指摘が、一つの芸術品を見たような感銘を読後に残した。綿矢さんの良いところ全部が詰まっている。綿矢作品の中でTOP3に入る名作だと思う(でも本作はやや刺激強めなので綿矢作品初心者の方には「蹴りたい背中」あたりから入ってほしいかな...)。2025/01/07
takaC
107
読解力が求められる「こわい話」って・・・2017/10/18
にいにい
104
綿矢りささん、かなり昔に「蹴りたい背中」を読んで以来だな。読メにも登録してない。今回は、怖い話ということで手に取った一冊。この怖さいいなぁ。好きなタイプの怖さ満載の短篇4話。「おとな」「トイレの懺悔室」のじわっとする感じ。「憤死」は、ためになった。本当に憤死はあり得ると信じれた。最も、気に入ったのは、「人生ゲーム」。本当に幸せな人生って何かな?。悩みや他愛無いことを共有できる聞き手は誰か?。深い......。綿矢さんの作風って、こんな風だったかな。目から鱗の作品。読んで良かった。2015/04/01
黒瀬
98
『ほかのどんなことは忘れても、おぼえていますよ』収録されている四編はいずれも、どこかがおかしく、ゾッとするのだがホラー小説ではない。不思議である。表題作『憤死』は自殺未遂をした佳穂の理解しがたい怒り方。『トイレの懺悔室』で主人公に許しを乞う同級生。『人生ゲーム』に現れた高校生の兄貴。『おとな』で語るりさちゃん。まるで全てが夢オチのようで、間違いなくそこに存在した現実。これは紛れもなく、怖い話だ。2019/10/28