内容説明
1945年、中国の国民党宣伝部にいた堀田善衞は、この地で敗戦を迎える。魔都とも称された上海で、27歳の青年は、敗戦から帰国までの1年半の混乱状況を詳細に日記に記し続けた。戦後日本に繋がる時代の出発点と、閉塞した状況下での青年の懊悩を描いた貴重な記録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みねたか@
29
日本の敗戦,中国の解放という歴史の転換期を上海で過ごした作家の日記。亡命者,流浪の人,スパイも入り乱れ,巷にはアメリカの物資が溢れる。退廃的であり底知れない不気味さを湛えた町の姿。日本人と中国人。その相違を冷静に観察しつつ,人間の極限の姿を見定めんとするように街を彷徨う。そして,人妻Nとの恋情。彼女が帰国して後の思慕の念。詩人の言葉がまばゆく輝く。語学に堪能な知識人にして優れた詩人でもある作者の魅力にあふれた書。巻末,武田泰淳をしのぶ開高健との対談で,当時の姿がより生き生きと蘇る。2019/10/25
波 環
0
作家の若いころに会えてうれしい。今の日本人がアジアとの関係で靴の下の痒さとして感じていることを、敗戦前後の上海で靴の中の痛さとして体感していた、のかな。それでも街を歩きつづけなければいけなかった詩人の日記。2014/02/21
almondeyed
0
やはり物書きというのは、戦中戦後の混乱した状況をこのように書き留めておくのだなということを再認識した。ジャン・コクトーも然り(占領下日記)。コクトーの方は誰かに読まれる事を前提とした開かれた日記だったが、堀田善衛の方は、もっとプライヴェートな印象が強い。が、これもいつ誰かに押収されてもおかしくない状況で書かれていたという事を解説によって知る。それはともかく、当時の上海にいた文学関係者の人脈を、この本を読んでからもっと深く調べたくなったのであった。2013/01/12
としゆき
0
27才、上海で日本敗戦の日を迎えた頃の堀田さんの日記。日本が敗れ「これからどうなるのか」という不安や、虚無感に押し潰されそうになる等、堀田さんの人間的な側面が見られる。27才の青年らしく、後の伶子夫人との情熱的な恋愛やお酒を飲み過ぎた話が頻繁に出てきたのも面白かった。終戦直後の上海の政治的・経済的混乱や、その後の国共内戦に突入していく経過、その中での中国人や日本人の様々な振る舞い。現場にいなきゃ分からない生々しい空気が伝わってくる気がする。2012/01/22
koz
0
日本敗戦を上海で文化振興会の一員として迎えた堀田善衛二七歳の頃の日記。終戦の1週間ほど前から始まるこの日記では敗戦という決定的な運命を迎えた日本の文学青年が上海で日本国家や民族の行く末についてどのように感じ、庶民として過ごしたのかが切々と語られている。日記というごく個人的な観点で彼や彼の周りの人間がどのように想い、そして語ったかがつづられている。現代のアジアは大きく様変わりしたが彼が感じた日本、中国、アメリカのズレはまだかわらずここに存在するように思う。2010/03/28
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