内容説明
史上空前の大帝国をつくりだしたモンゴル人は、いまも高燥な大草原に変わらぬ営みを続けている。少年の日、蒙古への不思議な情熱にとらわれた著者が、遥かな星霜を経て出会った一人のモンゴル女性。激動の20世紀の火焔を浴び、ロシア・満洲・中国と国籍を変えることを余儀なくされ、いま凜々しくモンゴルの草原に立つその女性をとおし、遊牧の民の歴史を語り尽くす、感動の叙事詩。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
138
エッセイのような連作短篇のような感じの作品がいくつか収められています。あまり物にこだわらないのがモンゴル民族なのでしょうね。ただそうするとあまり成長とかはなくなるということのようです。それもひとつの生き方なのでしょう。この本を読んでいるとモンゴルのイメージが本当に浮かんできます。2015/12/23
とん大西
120
夕方に読了した「修羅の家」がおぞまし過ぎて、口直しに積読の本作を手にとりました。…っても20年以上眠らしてた司馬エッセイ。購入当時は慣れなかったモンゴルの紀行文。タイミングなのか、ちょいと(?)歳とったからかスンナリ読めてしまったのは自分自身でも意外でした。遥か彼方、草原の国とそこに住まう人々。その今(といっても本作が執筆されたのは平成初頭)からモンゴル帝国を経て史記以前まで遡る歴史ロマン。変遷し続けた国家。変わらず連綿と受け継がれた空と草原と民。司馬先生の語りに壮大な叙情を感じて読了。良かったです。2020/05/31
優希
105
司馬さんにとってモンゴルは常に心の片隅にあった場所なのでしょう。だからこそ、語り尽くされた歴史が叙事詩として響いてきます。その思いを徒然と描くことで見える大草原と大海原、遊牧の民。そこに佇むのは、20世紀の炎の中で、3つの国籍の中で生きざるを得なかった運命を持つ女性・ツェベクマ。全てを包むものは、モンゴルの大草原にあるような気がしてなりません。2017/08/29
ehirano1
98
続き物に弱い私は、「モンゴル紀行(同作者)」の続編(?)が本書であるとの旨を読メのどなたかが仰られたので、良いこと聞いた!と思い読んでみました。作者は本書を紀行/評伝であると言っていますが、いやいやとてもとてもそれだけでは収まりません。びっくりするくらい中身が濃いですよこれは。ご興味がある方は、「モンゴル紀行」とセットで読まれることをお勧めします。2016/09/05
ehirano1
73
再読。ツェべクマさんの「私のは、希望だけの人生です」には涙しました。2016/09/17