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内容説明
美しい従姉アリサに心惹かれるジェローム。二人が相思相愛であることは周りも認めていたが、当のアリサの態度は煮え切らない。そんなとき、アリサの妹ジュリエットから衝撃的な事実を聞かされる……。愛し合う二人の恋はなぜ悲劇的な結末を迎えねばならなかったのか? なぜかくも人間の存在は不可解なのか? 時代を超えて強烈に問いかけるフランス文学の名作、みずみずしい新訳で登場!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ykmmr (^_^)
139
「力を尽くして狭き門から入れ。」という福音書の一言と、作者の実体験を元にしている。キリスト教に限らず、新興も含め、『宗教』には様々な価値観・制約があるが、この小説の題、「愛と信仰の対立」。『信仰』を重視すると『愛』を諦めないといけないのか?このパーツに登場人物たちを当てはめると、しっくり来てしまうし、宗教的に考えるとこうなるんだろう。しかし、『宗教観念』から抜け出してみると、「その人(ジェローム)想う妹(ジュリエット)の事を思うと、その好意を受けいられない。」という姉アリサがいる訳。2022/10/03
優希
113
清らかでありながら悲しみに満ちた恋愛小説でした。ジェロームとアリサは互いに相思相愛ながらも恋人関係に足を踏み入れなかったのは、アリサの崇高なまでの信仰心があったからでしょう。その象徴が彼女の掲げる十字架でした。ジェロームとアリサの中で愛のあり方への思いが違うことが悲恋へと誘われたように思えてなりません。純粋にアリサを愛するジェロームですが、アリサは愛を自分の信じるものに捧げたのです。信仰によって狭き門の向こうへと行ってしまったアリサ。愛することを問い続ける普及の名作ですね。2016/01/10
まさむ♪ね
54
こんなの無理!絶対耐えられない。好きな女性にこんな謎な態度をとられたりしたら、恋愛若葉マークなわたしは気が変になって、きっととんでもない事故を起こしてしまいます。ジェローム、あんた立派だわ。でも一番辛かったのはジュリエット。ラスト、彼女の言葉に胸が張り裂けそうになる。そして結局、一番我を通したのはアリサだろう。もし、ジェロームの心が妹に移っていたら、アリサは素直に譲ったろうか。否、きっとその時はどんな手段を使ってでも彼の心をつなぎ止めようとしたはずだ。彼女の崇高な美徳はジェロームの愛無しでは成立しえない。2015/04/08
Kajitt22
45
欲望を解放し、快楽に身をゆだねることのできる愛に対して、アリサとジェロームの愛は極北にある。会いたいのに会わない約束をする、話したいのに二人きりなるのを避ける、そして日記での圧倒的な愛の告白。我々はなぜこの物語に魅了されるのだろう。容易に入ることのできない狭き門への憧憬か、歳とともに少しづつ失くしてしまった何かへの惜別か。15歳くらいの時以来再読。その印象は変わらないような気がする。2016/11/11
ころこ
41
中世的なようにみえて、近代的なところが面白いと思います。「門」といえばカフカ『掟の門』が思い浮かびます。「掟の門」は内面の隠喩だと思います。他方で「狭き門」は恋愛を成就するにはより一層純化し、遠ざけなければならない。それが成就しないことによって、恋愛の純度が試される。恋愛とは核心の不可能性によって、可能性の射程が開かれているようにみえる。プロテスタンティズムがお金を呼び込むウェーバーの議論とは真逆の、恋愛に最も相応しくなればなるほど、ふたりにその成就は絶対にやってこない。そして、その機制は自分の中にある。2021/10/13