内容説明
1986年、入省二年目の私はイギリスにいた。語学研修に追われる単調な日々の小さな楽しみは、ステイ先で出会った12歳のグレンとの語らいだった。ロンドン書店巡り、フィッシュ&チップス初体験。小さな冒険を重ね、恋の痛みや将来への不安を語りあった私たちは、ある協定を結んだ……。聡明な少年を苛む英国階級社会の孤独と、若き外交官の職業倫理獲得までの過程を描く告解の記。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
75
ハードコアなアナリストというイメージの佐藤優氏ですが、グレン少年との触れ合いがとてもフルーティフルで、『過去の自分』と重なるグレンと対峙する佐藤氏がとても印象的でした。グレン、今も達者で暮らしてるかな。2019/10/12
aika
48
あとがきを読んで、好奇心で最後まで読み終えてしまったことを反省しました。知の巨人と名高い佐藤さんが外務省に入省したての頃、研修生活を送ったイギリスでの日々。ステイ先の少年・グレンくんと心の友となって過ごした一夏が、佐藤さんらしい膨大な情報量で巧みに描かれています。その反面、同期の武藤くんとの会話で、外国人と真の友情を結ぶことのできない外交官のシビアさが組織で生きる者の悲しさを物語ります。それでも、佐藤さんが疎遠になっていくグレンくんのことをどれほど大切に思っていたのか、タイトルを見つめ直すと心に響きます。2019/07/02
kawa
43
著者の外交官としてのソ連赴任前のイギリスでの14カ月間の語学研修の日常、外交官デビュー前史。ホームステイ先の12歳のグレン少年と、研修同期の武藤顕氏との交流を主として描く。(推測なのだが)階級社会のイギリスで家族と別の世界に行きたくなく大学進学をしなかった聡明なグレン君の選択。氏への様々なアドバイスで生涯の友人と思っていた武藤氏が、後年「佐藤悪行調査チーム」の責任者になる皮肉、そして「私が武藤君と会話を交わすことは、生涯ないと思う。」の独白。どちらも辛い話で、人生の無常を嘆息しえない読後だ。2020/09/18
佐島楓
43
外務省に入省したての著者は、イギリスで英語とロシア語を学ぶことに。ホームステイ先の少年、グレンと話すのがひとときの楽しみだったが・・・。この作品は読み物として面白かった。文化、歴史、民族の差を超えてグレン少年と親しくなっていく著者。少年を尊重する優しさ、いきいきとした会話、イギリスの伝統的な料理の数々が読者を楽しませてくれる。最後に味わうほろ苦さは、人生の致し方ない側面を直視しなければならない年代にふたりがさしかかったことを示唆しているのだろう。2015/01/22
ミスターテリ―(飛雲)
39
佐藤氏がイギリス留学時代を回想した物語。普通このような作品は、作者の一方的な視点で描かれ独断的になるが、ホームステイ先の子供グレンとの対話を通して、家庭、学校、家族、食生活などイギリス人の行動や考え方が、情緒豊かな文章で描かれる。「ぼくはイエローでホワイトー」では確かに生活は豊かになっているが、しかしイギリス人の根底にある階級意識や学校の階層など・・読み比べてみると面白い。同時に、君たちはどう生きるかみたいな、若い時にどんな考え方でどう判断するか、戦争や将来の進路から恋愛までいろんな問題を二人で議論する。2022/08/18
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