偽詩人の世にも奇妙な栄光

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偽詩人の世にも奇妙な栄光

  • 著者名:四元康祐【著】
  • 価格 ¥1,672(本体¥1,520)
  • 講談社(2015/04発売)
  • ポイント 15pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784062193931

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内容説明

吉本昭洋は中学2年の時、詩に出会った。教科書に載っていた中原中也の詩だった。以来彼は、詩を愛するようになり、生活の大半を詩に捧げるようになった。しかし、彼は詩を作らなかった。いや、作れなかったのだ。詩を愛しながら、詩作の才能の欠如を自覚した彼は、大学卒業後、商社に入社し、ビジネスマンとして世界各国を渡り歩く生活を送ることになった。しかしその後、出張先のニカラグアで、ある衝撃的な事件に遭遇する……。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

kana

26
偽詩人とは何者か、後半まで全くわからないのにとにかく詩に魅せられた吉本の人生が心躍るリズムで語られ、それがもう面白くて。頁をめくる手が止まらない。とはいえ、ストーリーとしての完成度も高く展開のテンポの良さはミステリー小説さながら。言語表現とは、クリエイティビティとは。詩を愛しながら自身では詩を生み出せない虚しさは、小説、絵画など表現の世界を愛し、その技術は学べても決して創作はできないという諦念を抱える多くの人が共感できることではないでしょうか。その諦念を胸に、私も著者に敬意を込めて感想を綴るばかりです。2017/06/10

三柴ゆよし

19
切に詩を切望し、しかしついに「自身の言葉」で書くことのできなかったひとりの男の人生を描く。いま私は「自身の言葉」と言った。それはなにか、そんなものが、果たしてあるのか、という問いをつねに内包しつつ文学作品に、もっと言えば日々の言葉に触れている者(選ばれしそこのあなたであり、私のことですよ)には必読の傑作であり、本書の主人公にして「偽詩人」たる吉本昭洋の前途には、秘密結社シャンディの参加資格が、バートルビー症候群患者としての診断結果が、そしてまた終わりなきパリへの道が、まさしく「茫洋」と開かれてあるだろう。2017/10/20

Norico

14
詩に魅せられているのに詩が作れない吉本昭洋。詩というものがあんまり分からないので、吉本昭洋の作品が出てこないのはありがたい。詩に限らず、翻訳家の皆さんは、きっと作品を一旦自分の中に取り込んで翻案しているから、日本語で海外作品を面白く読めるんだろうと思った。それは、自分で一から作品書くのと変わらないくらい大変なことなんだろう。特に詩のような短い作品だと、翻案なのか、海外の作品に感性を刺激されて生み出した言葉なのか、線引きはあいまいだよなぁ。2020/06/14

スリーピージーン

14
自伝とも読めるが著者はニセではない。著者の名をもじったような名前の主人公・吉本の一代記。言葉の使い方が絶妙だしリズムもおもしろい。さすがは詩人の文章だと思わせる。アーティストの頭の中はカオスだ。伝わるパフォーマンスは奇跡にも近いことなのだろう。あざとい物ばかりが氾濫する中で、純粋に心をうつ詩作に触れてみたいものだ。2016/03/03

かやは

11
​過去の偉大な創作物に親しみ過ぎて、自分の稚拙さに耐えられず、何も作り出せなくなる者の哀しみ。遠くから閲覧しているだけなら自分と創作物の価値は対等だけれども、近くに寄って同じ創作物として提示した途端、自分の創作物の価値は地に堕ちてしまうように感じる。眼高手低。創作とは変換作業。その変換が、いかに形を美しく変えているのか。自分できちんと咀嚼せずに創作物そのものをこねくり回しているだけでは、手垢に塗れたそれは偽物になってしまうのだ。2017/06/08

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