内容説明
子ども時代、青年期、中年期、老年期と、こころにはそれぞれの時期に特有の問題がある。鋭い目で人生の真実を見抜くのびやかな子ども時代、心の底深くに得体のしれぬものを抱えて苦しむ青年期、最も安定しているはずの時期に最も大きなこころの危機を迎える中年期、生きるということの意味を再び問いなおす老年期──と、人生のそれぞれの時期のこころの問題を、臨床家としての目がこまやかにとらえた同名タイトル講演集の文庫版を電子化したもの。巻末解説は、心理占星術・神話研究者の鏡リュウジ氏。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きょちょ
25
大阪の四天王寺で河合先生が講演した内容を収録した本。 「子供は素晴らしい」は、特に小学一年生の詩が良い。実に的確に大人を観察している。 「青年期の悩み」は、現代の特に「無気力な青年」に対しどのように対峙しカウンセリングを行っていくのか、その難しさが理解できる。 「中年の危機」は、ユングの素晴らしさがわかる。1920年代、世代においてあまり注目されなかった「中年」が、実はこの「期」に新しい危機を迎えることを言及している。 「老いを考える」は、全く同感。 河合先生はやっぱりすごいし大好きだ。 ★★★★2017/07/01
takam
14
河合隼雄さんが生まれてから青春、中年、老後といった各フェーズでの人生の過ごし方について講演の記録。子供の思っている多感な感覚を大人になって失うことの寂しさであったり、大人になりきれない日本人の青年であったりと幅広いトピックから構成される。日本人は大人として扱い始めるのが遅く、大学生が子供っぽいという指摘は今も変わらず。自分から動くことができない大人が生まれて、仕事しないおじさんが生まれるのかなと思った次第。2020/09/09
roughfractus02
10
四天王寺カウンセリング講座での講演を少年期、青年期、中年期、老年期と時系列的なテーマに編集した本書は、ライフサイクル理論をベースに、ユングが分析した「中年の危機」を転換として人生の変化を臨床事例から辿る。生物的変化、家族を基点とした関係の変化、社会制度的変化が絡み合う人生は、「いかに生きるか」から「いかに死ぬか」に問いが変わる過程でもあると著者はいう。本書を読むと、どの世代も単独で存在せず、常に他世代と関係があると各事例を通して語る臨床家が、各世代と関わりつつユングの「個性化」に向かう過程も垣間見える。2023/02/25
黒木 素弓
7
河合隼雄先生の講演録。子ども、青年期、中年、老年に分けて書いてあります。河合先生の、人に対する愛情と優しさが伝わってきて、人生の辛い問題さえも愛おしくなってしまうようなお話です。2016/10/17
Ribes triste
6
講演内容の書き起こしなので、若干読みづらいですが、ついつい引き込まれてしまう内容です。生きていると様々な問題に直面しますが、河合さんの優しい言葉に心救われます。2015/04/21