内容説明
歴史教科書,靖国参拝,「従軍慰安婦」……様々な利害が絡み合う歴史認識問題.しかしそこには,関係悪化と修復とを繰り返してきた東アジア国際関係の複雑な歩みが存在した.日本政府は歴史認識問題とどのように向き合い,中国・韓国とどのように対話してきたのか.その過程を丁寧にたどり,日本の立ち位置を明らかにする.
目次
目 次
はじめに
序 章 東京裁判から日韓・日中国交正常化まで
第1章 歴史教科書問題と「相互信頼」
1 昭和天皇・〓小平会見
2 第一次歴史教科書問題と宮澤談話
3 昭和天皇・全斗煥会見
4 中曽根と胡耀邦の「相互信頼」
第2章 靖国神社公式参拝
1 中曽根の誤算
2 中国の靖国観
3 参拝断念
4 第二次歴史教科書問題
第3章 従軍慰安婦問題
1 海部と盧泰愚
2 宮澤訪韓と加藤談話
3 河野談話
4 細川内閣から村山内閣へ
第4章 村山談話
1 村山とその周辺
2 官僚たち
3 何を意図したのか
4 日本政治の共通言語として
第5章 戦争の世紀を越えて
1 金大中と江沢民の来日
2 小泉の靖国参拝
3 「戦略的互恵関係」のなかで
4 菅談話から慰安婦問題解決案へ
終 章 歴史問題に出口はあるか
参考文献
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ぴー
88
本書は1980年代〜現在の日中、日韓関係の変容を端的に述べている。80年代の日中関係は、中曽根と胡の親近感、対ソ戦略、対中援助により、良好だったことや、90年代の「河野談話」に対して、韓国側も慰安婦問題について補償を要求しないと表明したことも初めて知った。95年に発表された「村山談話」を現在も日本政府が継承していることも改めて確認。しかし、近年では領土問題と歴史問題の関連付けにより、解決をさらに難しくしている。筆者も互いに敬うことが重要として本書を締めているが複雑化が進む中で「和解」はできるのでしょうか?2025/11/20
おさむ
33
日中韓3か国の歴史認識を巡る出来事について、1980年代以降を中心にまとめたもの。国内外の政治情勢に翻弄されてきた経緯をみるにつれて、解決の難しさを認識します。折々のトピックスが整理されていて読みやすいものの、特に新味はありません。最近の話題が少ないのも難点です。2015/12/13
1.3manen
32
本書の主たる目的は外交視点から政策過程を分析すること(ⅱ頁)。1986年6月22日、中曽根康弘は日本の歴史教科書の中に、右寄りのものが一つぐらいあってもいいのではないかと発言(77頁)。それで今は安保法制だから、自民党ってのは恐ろしい政党だ。村山談話は終戦50周年を記念したものであった(160頁)。安倍の場合は70年。安倍は第1次のときに慰安婦問題でつまずいた(193頁)。加えて、安保法制の拙速と、決めてから説明するという順序がおかしいことになった。外交とは、各国利害を調整する行為である。2015/10/15
浅香山三郎
21
年末に読んだ本。年が明けると、また日韓関係がぎくしやくして来たので、奇しくもタイムリーな読書となつた。歴史認識の中身(だう認識するか)については、たくさん議論があるけれども、どう折り合いを着けて来たかといふ検証の本は非常に少ない。冒頭の「歴史問題の6次元と主体・媒体」を頭に置きながら、今がどういふ局面かを冷静に見極めるアプローチがどの当事者にも求められる。2017/12/30
樋口佳之
17
三カ国とも大きく見ると権力の弱体化があって、国内には対立のエスカレートを望む人達もいる中で揺れている感。日中韓にちゃんとした関係があれば、北朝鮮への対処にも選択肢が広がるだろうと考えるともどかしい思い。むしろここを突破口にして基軸を切り替えられないものかとも思う。2017/09/06
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