内容説明
そのとき、ブレーキの軋みと、若い男の叫ぶと、衝突音が同時に起こった。“はねてしまった……!”道路に倒れている男は動かない。が、彼は辺りに誰もいないことに気付いた……。車体の傷から轢き逃げの発覚を恐れた彼は、車を修理に出した。が、あとで、車の損傷部分をカメラに納めて帰った男がいることを知らされた。そして、その男の正体が、会社の陰険な部下であることを知ったとき、彼は心にどす黒い殺意が吹き上げてくるのを覚えた! ある日の出来事をきっかけに、平穏な日常から恐ろしい魔界に落ち込む、人間の恐怖と戦慄を描くブラック・ロマンの世界。全5篇収録!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
63
短編集だが、いずれの作品もその底にあるのは血と遺伝。ひき逃げをした男が部下にそれを知られたのではないか。という恐怖から何故か家系を巡る話になっていく表題作から、我が子が本当に自分の子かという妄想に囚われた男を描く「残像」、まだDNA検査が一般化していない時代だったんだなあ。とか国家による特定の遺伝の抹殺「百年の追跡」等、どれもこれも逃れようのない血統というものがべったりと張り付いている。例外は体験を元にした「忍び寄る闇」くらいか。現在だととても書けない内容、悍ましくも引き込まれて読んでしまいました。2023/07/20
Yu。
22
ひょんな出来事をキッカケに目に付くほつれ… そのほつれが更なるほつれを呼び、それらが主人公を中心とした者達の隠されていた過去を露わにするという因果な血の連鎖が描かれる5つの血族サスペンスミステリー。いずれも己に流れるプラスのイメージなサラブレッドとは相反する黒い血の内容が本作の真骨頂。2016/01/31
ふう
12
Chikaさんに教えてもらった本。短編集で、どの話も辛いのですが惹きこまれました。 忌まわしい血、といえばバンパイアを思い浮かべます。彼らは生きていくために人の血を吸いますが、この作品に出てくる人々は、求めるわけではなく、求めたくもないのに、生まれた時から体内を流れる血によって陰惨な人生を送ることになります。『受け継がれる遺伝子は悪性の方が勝ってくる』など、科学は進歩しても扱う人間は進歩できないのではとちょっと暗い気持ちになる内容でした。 2012/09/06
Schunag
8
とことん厭な物語が5編。主人公が(or著者が)捉われる奇妙な、しかし抵抗し難いパラノイア的な恐怖が全編に共通し、これがタイトルの由来か(表題作はない)。後年の『血の翳り』に通じてゆく「黒い血の果て」「百年の追跡」を収録。前者の寿行らしい黒い妄念もいいが、マンシェットのように乾いた後者もよく、この方向での「血=ルジラ」物の長編を読みたかった。朝松健「魔障」や筒井「走る取的」を思わせる「忍びよる闇」の狂気=悪夢めいた恐怖は出色。ラストの注記が怖さを増幅するのが凄い。著者の短編集でも上位に位置する快作。2024/07/19
Hugo Grove
4
キーポイントは血です。。おもしろかったです。一話非常に印象的なエピソードがありました。「百年の追跡」実際にありそうな話で、なんとも言えない気分になりました。2012/08/30