内容説明
自意識過剰でちょっぴりウブな中学生、毛利豹一。彼の三高入学の顛末と無頼な学生生活、そして中退後の新聞記者生活を、恋愛失恋や珍奇な人たちとの交流を織り交ぜながら、痛快無比に描いた長編青春小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shizuka
58
織田作之助氏、私はこれが2作目。文体軽く、テンポも良くなかなか面白く読了。主人公豹一がこれがまた異常に自意識過剰な美青年なんだけど、なんだかんだいつも自己葛藤していて、悩みや怒りから勝手に想像して妄想して導き出す答えが結局独りよがりで、とてもとても付き合っていけそうにない。でも妙に気になる特異体質なキャラクター。年上女性にモテるのもちょっと納得。豹一の母がこれもまたどっしりしていて好感度高し。なぜあそこまで捨て身になれるのか。舞台には京都もあり、森見文学の先駆けだなと思う。作之助氏いいな。気に入りました。2017/10/19
優希
38
不運が不運を招くのが面白かったです。新聞記者に就職後も「問題」女優の記事を書くというこれまた不運。青年の成長を痛快に皮肉のように描いた作品だと思いました。2024/02/05
たぬ
24
☆3.5 イキり倒してるなあ豹一。そんなに他人の評価を気にしていちいち立腹したり急に仕事辞めたりしていたんじゃお金はたまらないし人生やりにくいでしょう。ルックスと成績はいいのにもったいない。それにしてもお君は結婚相手をもうちょい選べ。2番目の夫なんて妻のこと完全にATM兼家政婦扱いじゃん。2021/07/17
東京湾
19
「感覚的な嫉妬とともに始った最初の恋ほど苦しいものはまたとあるまい。女の魅力が増せば増すほど、嫉妬の苦しみは大きいのだ」自意識過剰で初心な青年の放浪と成長。肥大する自尊心を持て余し、家族や女や職に翻弄され、デカダンスの空気に取り巻かれながら青春は過ぎ行く。人情味あふれる人物たちや、十代であれば誰しも共感を覚えるであろう煩悶、軽妙な語り口も相まって、現代においても淀みなく楽しく読める青春小説だった。全体的に物語が生き生きと描かれており、戯作的趣向が凝らされている。織田作文学の原点でもあるだろう。隠れた傑作。2019/06/13
さすらいのアリクイ
14
織田作之助の小説を初めて読みました。僕が最近読んだ、現代の日本を書いた小説と比べると読み心地が独特というか、かなり軽い感じ。今の時代の小説でなら、主人公の家庭環境や、通う学校や会社のあれこれのことなど劇的に書かれそうな出来事も、この小説は相当控えめに淡々と書いている感じがします。しかしそういう理由だから感情移入が難しい小説…ではなく、逆に主人公たちの気持ちや喜怒哀楽ぶりが手に取るように分かる小説です。そして戦前の大阪や京都の、町中の人々の暮らしの雰囲気。読んでいて、この雰囲気に浸れるのが面白い小説でした。2015/11/29
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