内容説明
逃亡中の犯罪人・徳蔵は、山中で死にかけた仔犬をひろい、ゴロと名付けた。しかし、ゴロは骨肉しか喰わず、長ずるにつれて不敵な面持ちを備え始めた。四肢は異様に太く、眼窩は裂け、切れ長の目には底知れぬ青い光をたたえていた……。そして村の犬はゴロを避け、山からは鹿や猪が姿を消した。そんなある冬の夜、徳蔵は、悲壮感のこもったすさまじい咆哮をきいた。それ以来、徳蔵はゴロの姿を見なくなった。――徳蔵は新聞記事で、“猟師に追われた最後の日本狼”の話を知ったのは、それからしばらく後のことであった……。動物と人間との葛藤と交流を描く、西村寿行の感動の動物小説! 全6篇収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
眠る山猫屋
9
再読。西村寿行さんの小説はハードな凌辱シーンが合わなくて読めなかったのだが、久方ぶりに読むと意外とそうでもない。いや、世の中がもっとえげつなくなっただけか。この動物がらみの短編集は西村さんの良い面が前にでていて良かった。表題作品は人間の醜さ、そして孤独な狼が描かれていたが、最初は可愛くもない狼が、ラストの孤高な死に様を経て崇高ささえ感じられる様に、他の物語では、石鯛や雉が魔物の様に描かれ、人間と闘い、そこで語られる生き物の有り様は、ちょっと類をみない壮絶さ。だからこそ美しいと感じられるのかな。2016/05/21
つちのこ
0
1984年頃読了