内容説明
贅沢でハイカラな学校として知られる文化学院に通う十八歳の品子。財閥の血をひく裕福な家庭で育ち、初恋の相手泰治と婚約して、とても幸せなはずだった。だが結婚後も夫の心は、気高く美しい大使令嬢の真津子に向いていた──。芸術家の夫が望む奇妙な三角関係のなかで、むくわれぬ愛をひたすらに求める品子。彼女を取り巻く人間模様を、昭和初期の上流社会を舞台に華やかに描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カピバラ
26
恋は盲目といいますか…なんというかみんなダメな男と女。1人くらいまともな人がいたらいいのに。と悲しくなりました。なにより、岩田さんが不憫、まあ、覚悟しての結婚だからしょうがないか。2015/04/09
こすも
19
第二次大戦に向かう時期の日本の、西欧化が進んだファッション・風俗・文化についてたくさんの描写があり、大好きな雰囲気の作品でした。主人公の品子が想いを寄せる相手が青年音楽家ということで、シェーンベンクの「浄められた夜」の初演とか新交響楽団(現在のNHK交響楽団)が出てきたりしたのも楽しかったです。ストーリーは、男と女の恋愛は、ときに理不尽で残酷だということをイヤというほど見せつけられる内容です。ホント怖いなあ。2017/04/03
フェリシティ
8
なんだかんだ林真理子読んでるなぁとつくづく思うこの頃。読み出すと止まらなくなることが多いです。今回は林作品の中でもかなり好きなジャンル。ちょっと昔の文豪が書きそうな話だなぁと感じたり。品子らハイカラな女子たちのオシャレの描写、パーティーやオペラの豪華な風景が、読んでいて贅沢な気持ちにさせてくれます。この時代の華やかさっていいですね。本作の良さは、解説で玉岡かおるさんが全て言い表してくれていると思うので、興味を持たれた方はぜひ一読を。ここまで素晴らしい解説はなかなかない。聡明なのに恋に盲目な品子に幸あれ。2015/08/21
ぽけっとももんが
4
どうせお金持ちの話を書くならば、林氏にはこの時代の上流社会をもっと書いてほしい。確かに品子は俗物だし、泰治に至ってはただのカンチガイ男だし、共感するには程遠い。でもこれが少し過去のセレブリティな人たちの話だと思うから、綺麗なもの美しいもの洒落たファッションと風俗を楽しめる。2014/07/27
YH
4
この時代の貴族、華族の物語は好みなのでそれだけでプラス評価ではあるけれど、どうにもこうにも林真理子の描く男性は好きになれない。品子が泰司になんでそんなに入れ込むのか全くわからないけど、男女の接する機会の少ないこの時代、インプリンティング効果なんだろうな。まあ、えてして恋とはそんな物なのかなあ。2009/04/28