内容説明
作家・長谷川伸は幕末の「赤報隊」隊長・相楽総三の軌跡を追い、草莽の志士たちの生死をたどることで「歴史」というものの姿をあらわしました。明治維新について記された書物はあまたありますが、その叙述の志の高さにおいて本書をこえるものはまずないでしょう。軽薄で声高な「改革史観」がはびこりつつある昨今、「偽官軍」の悲劇をあますところなく描いた本書がふたたび多くの読者に迎えられることを切望します。(講談社学術文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
44
赤報隊を率いた相楽総三の実録小説という印象を受けました。それだけ史実に忠実なのでしょう。ノンフィクションとは異なれど、どこまでも歴史を追いかけているのが分かります。2022/02/18
かっぱ
27
【図書館】巻末の解説で長編小説とされていますが、小説というより記録という印象。相楽総三の孫が仏壇の中から血で固まった遺髪を発見する「泣血記」(孫・木村亀太郎著)で始まる。尊王攘夷派の相楽総三をリーダーとする赤報隊第1組。官軍の最先鋒であらんとして先を急ぎ過ぎて疎んじられたのか、はたまた政治的な意図が働いたのか。赤報隊は偽官軍とされ、その多くが、逆賊の汚名を着せられて殺される。相楽総三も下諏訪にて斬首刑に処せられ非業の死を遂げる。その裏には、岩倉具視か西郷隆盛だかの力が働いていたことは間違いなさそうである。2018/03/03
金吾
24
ノンフィクションではありませんが、史実を忠実に再現しようとしているように感じる力作です。歴史は綺麗事ではないと思いました。2022/09/26
叛逆のくりぃむ
9
相楽総三の動向を通して、関東に於ける討幕運動の展開を記述している。武州の郷士を中核とし、京で活躍した新撰組とは、また異なる”草莽の悲劇”がここには描かれている。2016/09/24
紫
3
赤報隊事件で有名な相楽総三の事跡をたどる実録風歴史小説。実説重視の著者らしく、史実にもとづく展開ではことあるごとに典拠を提示するというこだわりぶりであります。ただ、ノンフィクションや論文とは違うのだから、発表から六十年が経過して、学術文庫というレーベルから出版されるというのはいかがなものでしょう。逆にいえばこの六十年間に学術研究は進んでいなかったことになるのか。偽官軍事件の原因は年貢半減令の取り消しのためとは説明があるものの典拠の提示はなく、参考資料のつもりで読む場合には取り扱いに御注意を。星5つ。2020/05/10