内容説明
「撫順の久保か、久保の撫順か」と、名声を全満州にとどろかせた元満州撫順炭鉱長久保孚は、敗戦後、中国国民政府から「平頂山事件」の戦犯容疑をかけられ、軍事裁判で死刑判決をうけた。昭和7年9月、撫順南郊の平頂山集落を襲った関東軍守備隊の一部が、住民多数を虐殺した。当時、炭鉱業務を一任されていた炭鉱次長の久保は、共同謀議者の一人として、いわれなき戦犯の汚名を着せられたのである。
感想・レビュー
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うたまる
2
冤罪処刑された久保孚の生涯を前景に、満鉄と関東軍の盛衰を後景に配した満州国の実録。零下20度にもなる満州は、反面熱い土地だった。ゼロからのスタートであるため、日本にもない設備や制度を用いることができた壮大な実験場。ここに集った政治家、軍人、技術者、開拓民は、皆ある種の山師だったのだ。そして起こった平頂山事件。恥ずかしながら、千人近く殺害されたこの事件について全く知らなかった。満州事変という一国を掠め取る大悪の陰に隠れた小悪というところか。ああ、関東軍のアホさが遣り切れん。歴史を直視することが遣り切れん。2017/10/31