内容説明
清少納言の感性が、時を超え、よみがえる! 日本随筆文学の名作「枕草子」と現代文学の第一人者大庭みな子の出会い。読みやすい現代文に大庭風解説を加え、「枕草子」が新たな装いでよみがえります!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syota
25
酒井順子訳と比較するため再読。青少年向けの訳を基にしているため、分かりやすさは抜群。簡潔で読みやすい常体の文章で、通常であれば脚注で処理するような説明も、巧みに本文の中に溶け込ませている。重要な段には鑑賞の手引が付いているのも親切。ただ抄訳であることと、元々が青少年向けという性格上、男女の艶っぽい話や大衆蔑視と受け取れる箇所は、ごくあっさり流すか割愛されている。敷居の高い枕草子を手軽に読ませてくれるという点で大変優れていると思うが、作品を十全に味わうにはやや物足りない。2017/04/13
syota
8
枕草子の現代語訳。古文の授業では退屈という印象しかなかったが、いやいやどうして、こんなに面白いとは思わなかった。一条天皇の后である定子中宮と彼女に仕える女官たちの華やかな日常生活、そして連日出入りする殿上人たち。教養と機知にあふれたやりとりは西洋のサロンを彷彿とさせる。詩歌文章に優れた清少納言が会話の中心となり、重宝されたのも納得。歴史上の人物である定子中宮の人柄が文面から浮かび上がってくるのも、事実に立脚した随想の強み。訳文は簡潔な常体でありながら女性らしさも滲ませ、内容によくマッチしている。2015/03/18
Zing
2
清少納言の随筆、枕草子の現代語訳版。一部の段抜き出しですが雰囲気は充分に味わえます。男相手に短歌や漢詩でウマイこと言ってみせたり、「気に入らない人の悪口くらい言いたくなるわ」等々気持ちいいほどバサッと切ってみたり(しかも現代にも通じるものが多いので笑っちゃう)、かと思えば夏は夜~の段みたいに世界をとても美しく捉えていたり。表情はコロコロ変わるけど、どの表情もすごくすごくステキな方だなぁと思います。2014/08/07
ダリア
1
枕草子が中宮定子の鎮魂歌と後書きにあって納得。不遇であった中宮定子の元で哀しいこともあったろうに、あえてそういうのを残さず中宮定子の素晴らしさ、楽しかったことのみを書こうとしたところ。清少納言の明るい性格だからこそ書けたのだろう。帝の愛だけを頼りにしなければならなくなる中宮定子は桐壷を思わせる。2018/04/26
三井寿里
0
「枕草子」と言えば、元祖エッセイ本。だというのに、受験の時にせっせと現代語訳しただけで、じっくり読んだことはなかったな…と、手にとってみました。うん、面白かった。これがベストセラーになる意味はよく判ります。卓越した色彩感覚で描かれた風景、日々の生活が手に取るように判る会話。決して紫式部が評したような「知ったかぶりの嫌な女」ではなく、ちょっとプライドは高いけど、引くべき所もわきまえた、魅力的な女性です。 男女のやり取り、顰蹙をかう人間の言動など、現代と変わらない人間ドラマで一気に平安時代が近くなりました2015/02/17