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内容説明
南北朝の動乱期に、武力によらない仏国土の理想郷を目指した足利直義。兄尊氏とともに室町幕府の基礎を築いたにもかかわらず、最期は兄に毒殺されたとも伝えられる悲劇の人物の政治・思想・文化に迫る。
※※本作品は紙版の書籍から口絵または挿絵の一部が未収録となっています。あらかじめご了承ください。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はるわか
18
しずかなるよはの寝覚に世中の人のうれへをおもふくるしさ(風雅和歌集)。政治権力がピークに達したときの和歌、深い苦悩。驚くべき速さで強大な権力を獲得し、突然に失脚。伝統尊重型の人間で、冷徹かつ禁欲的。鎌倉将軍府執権、中先代の乱、武家勢力の結集、後醍醐との決別、二頭政治。観応の擾乱:急進派(高師直)と守旧派(足利直義)の対立抗争。直義嫡男如意王の誕生と夭逝。どちらが勝ったのか分からない状態に。観応の擾乱は直義があわよくば幕府の首領の座を得ようとしたところに発端。直義毒殺。怨霊鎮魂、神格化。醍醐寺、三宝院賢俊。2016/06/28
keint
9
足利直義について、人物像および二頭政治の実態とその破綻を多様な史料から考察している。特に和歌や宗教、絵画まで踏み込んだ思想の分析は著者の強みが発揮されている。政治や宗教にも鎌倉的保守性を帯びており、夭折した息子の誕生により政治的野心を抱いた直義という視点は今までなかったものである。2020/08/09
umeko
8
「日本の歴史〈9〉南北朝の動乱 (中公文庫)」の足利直義が素敵だったので、ミーハー気分で掘り下げてみた。どのような政治を目指したのか、仏教との関わりなど、私なりの新たな発見があった。2017/06/12
邑尾端子
8
著者は南北朝史の第一人者とも言うべき研究者であるが、本書には研究者としての学問的立場を超える足利直義への熱い思い、もっと彼の業績を多くの人に知ってほしい、もっと再評価してほしい、といった、まさしく「足利直義という人間には恋を感じました」ともいうべき情熱を感じた。かくいう私も足利直義に恋に近いような興味を抱く一人ではあるが。彼は「室町幕府を創った男」でありながら、また一方で鎌倉幕府の残滓を背負い続け鎌倉的な社会への回帰を志向し続けた人間でもあった。鎌倉時代の真の終焉は彼の死であったという筆者の言葉が印象的2015/05/08
onepei
4
足利直義を精神世界や花押、肖像画まで取り上げ広く論じておもしろかった。もし直義が死ななかったら、(室町)幕府というものは早くに空中分解していた気がする。なんとなく豊臣秀長と比べてしまう。2015/03/25