内容説明
『深淵のガランス』に続く、佐月恭壱シリーズ最後の作品
花師と絵画修復師の2つの顔を持つ佐月。絵画修復のため立ち寄った寺で昔の恋人に再会して……。著者急逝によるシリーズ最終作
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
119
絵画修復師シリーズの2作目で、この中には2作の短編が収められています。いつもじっくりと読ませてくれる作品で非常に私の好みなのですが、この継続作品が読めないのが残念です。他の作品に出てくる主人公も今回は顔を出したりしています。また主人公の学生時代の話で恩師や恋人であった人物などとのやり取りも出てきて楽しめます。2017/12/11
佐島楓
57
「人間であることを忘れる」ほどの集中力で絵画修復に挑む佐月。脇を固める個性的な男性、魅力的な女性たち。皆腹の底が読めない胡散臭さを持ちながらも、それぞれの美学に沿って生きている。更なる広がりを見せそうだったシリーズだったが、続きをもう2度と読めないことに寂しさを覚える。2018/03/22
Kenichi Yanagisawa
39
花師にして絵画修復師である佐月恭壱。天才的な絵画修復の技術を3つの短編で繰り広げてくれる。真贋を見抜く目でその修復に秘められた謎も、、、。なかなかクールだ。2013/01/21
venturingbeyond
35
蓮丈那智、宇佐美陶子、香菜里屋のマスター、そして本作の主人公・佐月恭壱と、著者のシリーズの主人公の人物造形は作を重ねるごとに彫琢をまし、どのシリーズもどっぷり作品世界に没入し、堪能させてもらっている。本作でも、冬狐堂の姿がちらついているが、これから先、それぞれのシリーズで、作品を跨いだ登場人物の共演が描かれたのではないかとの思いも…。他のレビューにもある通り、著者の早逝が悼まれる。2023/01/28
エドワード
34
銀座の花師かつ絵画修復師・佐月恭壱の活躍ふたたび。今回も持ち込まれる、いわく付きの絵画の修復、毎度ながら、指、眼、肺まで酷使する修復の描写が迫力満点だ。三つの物語は、佐月がかつて仄かな恋心を抱いた恩師の娘・由美子を中心につながっている。佐月に依頼を持ち込む危ない者たち。絵画修復と贋作は紙一重。美術界は政界、経済界ともつながる―美術は金もうけの手段にならざるを得ないのか?佐月は黙して語らず。終章「秘画師遺聞」にて解かれる謎、哀しい運命。冬の狐がゲスト出演するお楽しみ。佐月の物語はこれにて終了か、残念無念。2018/10/07