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内容説明
歌に目覚めた後鳥羽上皇の元には藤原俊成、定家、良経など、新たな手法で歌を詠む廷臣たちが揃い、式子内親王、俊成女など、女性歌人も顔を並べた。宮廷をあげて歌に明け暮れる稀有な時代の幕明けを描く。
※本作品は紙版の書籍から口絵または挿絵の一部が未収録となっています。あらかじめご了承ください。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はちてん
28
通読しただけで感想を書く段階ではなくなのですが、院も定家もガンコ者でしかも美意識の固まり。新古今集が面白いのは当然かもしれません。載っている歌人も興味深い面々ですが、本書では時流に乗れなかった歌人にも言及されているので勉強になりました。2015/02/06
かな
5
新古今集が成立した背景、時代、関わった人々を、後鳥羽院と藤原定家という二人の人物を軸にして分かりやすく解説する本書は史実のドラマチックさも相まって大河ドラマのように大きくうねり展開してゆく。資料引用の際に、原文の後に親切な訳を載せてくれるので読みやすかった。日本史でいえば鎌倉時代、武家政権が成立したからといって王権が消えてしまうわけがなく、そういうなかで天皇を中心に文化を隆盛させることには、現代で想像しきれない意味があったのだろう。人々の華やぎが読んでいる私にまで移って熱に浮かされたような気持ちになった。2019/11/26
吉田裕子
4
細かな事実や近年の学説を丹念に追いながらも、読み物として面白いという奇跡のバランスの本。和歌に目覚めた後鳥羽院の熱、正治初度百首で一晩にして院の評価を得た定家の興奮、和歌所の活気。それらの空気が伝わる文章だ。ところで、遠島に流された上皇といえば、日本三大怨霊の崇徳院のイメージがあるけれど、後鳥羽院の隠岐での暮らしはそれと大きく違ったようだ。寂しいなかにあって矜持や文化を失わず、京とのやり取りもあり、遠島御歌合なる誌上歌合も企画されていた。新古今和歌集の再編を始めたのが、帰京が絶望視された頃なのだなぁ。2021/05/08
nininice
4
掘り下げて知りたい事柄や引用がたくさんあって面白く、勉強になりました。「物語二百番歌合」や、「有心無心連歌」など、とても興味深い!もっともっと新古今集時代を知りたいし、新古今集時代の後の時代にも興味が湧いてしまい、どこから始めれば良いのやら…!2017/01/12
Waka
3
田渕句美子氏の図書には何度かお世話になっており、一冊は引っ越しの餞別に頂いて愛読している。こちらも前から気になっていたものをようやく。 50頁、宮内卿を「藤原師光女」としているのは「源師光女」の誤りだろう。式子内親王の同母姉妹とされた休子内親王については、最新の研究では母が異なるとわかった、と4年後の著書に田渕氏自身が書いておられる。 丁寧な文章に、私も以前から信頼を寄せている。研究者としての冷静さを保ちながら、時折、あとがきなどに、並々ならぬ愛情の感じられる文章も。良書。勧めてくださった方に深謝。2019/06/07