内容説明
芥川賞受賞作「アメリカン・スクール」から戦後文学の金字塔といわれる「抱擁家族」までの十年間の短篇作品を精選。この間、アメリカ留学、家の新築、妻の手術、妻の死、再婚と、著者自身へもめまぐるしい「事件」が生じ、〈関係〉をめぐるドラマが主題となる。見知らぬ男からの一方的な関係、監禁という関係、友人の中にいる異質な友との関係、友人と妻の姦通……。「抱擁家族」へとなだれ込む、貴重な短篇集。
目次
声
ある掃除夫の観察
遅れる男
草ぼうきの唄
家と家のあいだ
ある作家の手記
棲処
洪水
靴の話
眼
獣医回診
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
りつこ
29
面白いんだけど楽しくはないので読むのに時間がかかった。不倫がテーマの作品が多いのだが、恋愛の高揚はなく、むしろ妻と愛人両方の間をフラフラすることで自分を保っているような男が描かれる。いとおしく思ったかと思えば嫌悪したり軽蔑したり。丁寧に書かれているだけに読んでいてうんざりする。不倫以外の作品「声」「ある掃除夫の観察」「遅れる男」などは「厭な物語」に収録されていてもおかしくないようなインパクトのある厭な話。じっとり日本的なのにどこか海外小説のような雰囲気があるのが不思議。2015/03/29
zumi
6
「草ぼうきの唄」のみ。2015/01/14
Tonex
2
副題に「小島信夫家族小説集」とあるが、不倫がテーマになっているものが目立つ。同じ頃(昭34)出版されたエッセイ『実感・女性論』に書かれている姦通論と響き合うものがある。【収録作品】声、ある掃除夫の観察、遅れる男、草ぼうきの唄、家と家のあいだ、ある作家の手記、棲処、洪水、靴の話、眼、獣医回診(資料/冬樹社版解説=平光善久、解説/抱擁家族前夜-四十代の短編集=青木淳吾、年譜・著書目録=柿谷浩一)2015/02/24
kentaro mori
1
⚫︎「おい、お前達、この靴は何だ。こんなぬぎようをすると、この家はおれが死んでも、お前にやらないぞ」といった。その言葉が笑止千万なことが分っているので、彼は笑った。しかし、その時には、もう彼を笑わせてはおかない、一つの力が奥の方から近づいてくる気配があった。彼はそこであわてて、いいなおした。「見てくれ、おれは靴を買ったよ。カンガルーの靴だよ」それから、すっかりテレて、「や、や、や、や、お父さまのお帰りですよ」といった。それから、「いや、いや、まだまだおれの家だって大丈夫だ」と呟いた。(「靴の話」)2024/01/24
yoyogi kazuo
1
星新一や筒井康隆を思わせる短編もあり、抱擁家族と地続きのような作品もあるが、一番不気味なのが最後の獣医回診。獣医の経験もないのに(あるのか?)何故こんなものが書けたのか?解説者も疑問を提示しているが、つくづく謎が多い作家である。2021/05/23
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