内容説明
由起谷主任が死の床にある元上司の秘密に迫る表題作、ライザが特捜部に入る以前を描く「済度」、技術班の活躍を描く「化生」など至近未来警察小説シリーズのこれまでに発表された全短篇8作収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サム・ミイラ
184
シリーズ初の短編集。全編タイトルに仏教用語を冠しているのもどこか恣意的で深い。まず第一話の「火宅」には恐れ入った。これはもう完璧な警察小説である。エスエフ的要素は全くない。こんな話も書くのかと驚く。ラードナー警部の過去を描く「済度」は上質のスパイ物であるし本編でも度々出てくる由起谷警部補の亡き親友とのエピソード「沙弥」には泣かされる。その一方「勤行」ではユーモラスな一面も見せてくれる。そしてその全ては機龍警察の重要なファクターとなる。月村了衛の幅の広さと才能を堪能出来る一冊。ますます楽しみになってきた。2017/10/07
しんたろー
178
8つの短編集はシリーズファンにはタマラナイ内容だった。未読の人には魅力の半分も伝わらないかも知れないが『未亡旅団』で虜になった私はタップリと堪能した。単なるサイドストーリーではなく、レギュラーメンバーの背景が浮き彫りになってくる物語と、本編とは異なったテイストも試されているのも嬉しい。ライザの過去を描いた『済度』とミステリ色の強いユーリが主役の『雪娘』は哀しい余韻で好みだし、警察小説らしさが強く出た由起谷が主役の『火宅』と宮近が主役の『勤行』は横山秀夫さん風で面白かった。さぁ次は『狼眼殺手』が楽しみだ🎶2018/11/19
おしゃべりメガネ
159
作者さんの代表シリーズ作品のスピンオフ短編集です。さすが月村さん、短編集でSF要素がほとんどなくても、本シリーズの持ち味をまったく失わずに書きあげてしまうのは流石です。これまでのシリーズに登場した面々のサブストーリーを現在、過去交えてつづられており、よりいっそうキャストに感情移入できました。特に’白鬼’こと「由起谷」警部補が刑事になった理由の話は感動モノです。また、カタブツの印象があった「宮近」警視の意外な人間性にも楽しんで読むコトができました。ボリューム以上に深い味わいのある素晴らしい短編集でした。2015/07/07
KAZOO
146
機龍シリーズのスピンアウト作品集です。短編が8つ入っていてそれぞれのメンバーの若い頃の話や、あまり大きな事件ではないけれどその事件や出来事を通してのメンバーの役割や性格がよくわかるような作品で楽しめました。2016/09/23
starbro
134
「土漠の花」に続いて「機龍警察」シリーズの短編集を読みました。昔のTV番組で派手なアクションシーン満載の「西部警察」を少し思い出しました。本編のサイドストーリーなので本来は、長編を読んでからの方が楽しめると思いますが、先入観なしというのも良いかも知れません。個人的には、由紀谷が警察官を目指すきっかけとなったエピソード「沙弥」がオススメです。次回は長編を読む予定です。2015/03/07