内容説明
ペリー来航以来、揺らぎ始めた幕府の権威を維持強化するため、大老井伊直弼が断行した安政の大獄は、吉田松陰・橋本左内ら英才俊傑のみならず、幕府内の人材も一掃することとなった。侘しい埋木舎時代の井伊直弼と国学者長野主膳との異常に親密な師弟関係・主従関係から説きおこし、大獄へと突き進む二人を描く。 〈解説〉家近良樹
感想・レビュー
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叛逆のくりぃむ
11
安政の大獄を主導した井伊直弼とその走狗となり暗躍した長野主膳の2人に焦點を當て、安政の大獄の實相を闡明にした小著。阿部正弘が推進した安政の改革の成果を悉く潰していく姿には、暗愚といふ言葉以上のものを感じる。大獄の結果として川路聖謨や岩瀬忠震をはじめとする幕府實務官僚が肅清されたことにより幕末動亂期に於いては、薩長に匹敵する人材が中樞にはゐない結果を生み出したことは、直弼の行動が幕府の壽命を大幅に短縮したといふことが出來る。2015/12/12
bouhito
2
慶喜に対する筆者の一刀両断の評価がおもしろい。「年長・英明が売り出し文句だったが、その英明さは幕府を倒壊させる程度のものだった」。また、本書は参謀・長野主膳についても、かなりの文量を割いている。主膳については幼少期の記録はなく、二十七歳の時に伊勢の宮前村に姿をひょいと姿をあらわした。そこから彼は二条家に勤仕し、後年は直弼につかえ、京都を拠点に日本をひっかきまわすのだが、四十八歳で斬罪に刑せられた主膳に対する筆者の評価は「身もと不明の浪人者としてしてふさわしい死にざま」とやはり簡潔で歯切れがよい。2015/09/06
駄目男
2
大老の出現が無ければ安政の大獄もなかった。 あたら有為な人材を死に追い遣った責任は大きい。 しかしこの時点で攘夷などとても出来るものではないと思っていた人はどれぐらい居ただろうか。 水戸斉昭などの言う外国船打ち払い令などは妄想というか全く現状の認識に欠ける。 ただ一点、開国派も攘夷派も意見が一致しているのは、お隣、清国の二の前だけは真っ平だということだろう。2015/01/16
ともたか
0
時代の変遷期に起こるねじれが起こす事件なのかしら。 あのIS(いすらむこく)のテロも米国がイラク戦争でフセイン体制を 壊したことから引き起こされている。文明文化が良きにつけ悪しきにつけ 先に進むためにはこうした事件が起こる。2015/02/18
トクナガ
0
長野主膳なんて名前すら知らなかったので全編通して非常に面白かった。井伊直弼も名家とはいえ兄が早世しなかったら家督を継ぐこともなく無名のまま終わっていたと思うのでちょっとした違いで幕末の権力抗争も変わっていたのかもしれない。2022/05/10