内容説明
小説という虚構の世界に人間の真実を宿らせるには、どうすればいいのか。物語を解体した。言葉に疑念をはさんだ。そして、いつしか「おはよう」という挨拶すら容易に口にはできなくなっていた――故立原正秋氏らに才能を評価されながら、著者は郷里に帰り十数年余、研鑽を重ねた。古代中国の世界を描く以前の初期作品を厳選し、デビュー十年を機に刊行する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
CCC
7
著者がプロデビュー前に書いた作品集。歴史小説はなし。どの短編も純文学志向。そう言えば聞こえはいいがあまりに読みにくかった。著者の作品は難しい単語を多用する割にすっと入ってくる読みやすさがあるが、この本からはその美点が寸分も感じ取れなかった。まあ文の格調高さには後の作品に通じるものを読み取れなくもない。でも核を持って読めるようにしてくれないのですぐ迷子になってしまう。内向きにしか書いてくれない不親切さがあった。裏返しで今の著者がいかに親切な書き手かが分かる本だった。2025/04/13
りんか
1
宮城谷氏が歴史小説を書く前に書き上げた作品集。言葉とは何か、語るとはどういう事かを模索し続け、迷いの中で言葉を失い日に数行、月に一枚ほどしか書けなかったという作者(宮城谷昌光全集付属のインタビューより)が迷宮の壁に左手を添え全身全霊で周囲を探りながらそろりそろりと歩みを重ねて行く姿を追って見るような作品群。幻想文学、哲学のような難解さの中に仄かな光がさしているような文章。読み進めるのに大変な根気と時間が必要だった。2015/02/11
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