内容説明
ある殺人事件をめぐる家族の物語――。事件後、報道によって明らかになる被害者の姿。それは、近しい人間を殺され、ただでさえ苦しい残された家族をさらに追い詰める。またそれは、加害者側にもいえることだった。真に迫る緻密な心理描写で他の追随を許さない著書の、後世に語り継がれるべき傑作が装いを新たに登場。読みだしたら最後、読み手の心を放さない。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
401
下巻に入って、小説は俄かに法廷ミステリーの様相を呈し始める。弁護士と検事との必死の攻防は、それはそれとして面白くはあるといえる。しかし、上巻にあった風紋に象徴される、被害者と被疑者の周縁の人々の心の揺れが、被疑者の妻以外にはさしたる展開が見られないのは、本書の持つ特質からしてやや残念である。そして、結審の後は「誰も救われたものはいない」という結果に終わるのである。それはまさに真理だとは思うが、その言葉を受けたエンディングは、いささか物足りない気がする。もう少し、気の利いた終わり方があったのではないか。2019/01/24
nobby
118
容疑者起訴から動き出す事態にも依然その主題はない。裁判の結審にむけて、一矢を報いる唖然の主張、はたまた憤りからの面目躍如もあり遂に判決に至る。その結果や経過に、被害者・加害者とも甚大なる中傷や喪失、または細やかながら希望や光射す様に翻弄される。ある者は破滅に向かい、あるいは新たな一歩を踏み出す一方で、まだ背負う苦渋の未来を知らない者もいる…突如の災厄に自己犠牲重ねるばかりの見苦しさ、メディア報道に左右される周囲からの視線や態度などの心情が何とも痛々しい。何より最も近しい人が戻らない空虚を感じてまた切ない…2017/09/28
のんき
101
犯罪加害者の家族の気持ちがよくわかりました。人殺しの夫の妻とか、人殺しの子どもと、周りから冷たい目で見られます。マスコミから逃げて、ホテル暮らし。加害者の家族は、なんの罪も犯していないのに。でも生きていかなければなりません。妻や子どもたちが、どうやって生きて行くのか気になります。ずっと人殺しの家族と思われて生活していくのか、それとも、「風化」して、何年か過ぎれば、人殺しの家族と思われなくなるのか。被害者の家族よりも、生きていくのは厳しいし、難しいのかなあ2019/02/26
Satomi
74
被害者の娘、加害者の妻。立場の違う2人が、色んな想いを巡らせ、少しづつ壊れていく。一つの事件から広がる風紋は果てしない。普通の暮らしが奪われる。加害者家族だけではない。被害者家族もまた知られたくない事実を暴かれ、叩かれる。証言を二転三転させる加害者、その証言に多くの人が惑わされる。少し前の作品なのでネットでの被害は描かれていないが、今ではそれも加わる。知りたくない事、知らなくてもいい事が、自分の知りたいと思う気持ちとは関係無く突きつけられる。普通の暮らしが有り難い事なのだと改めて感じるのでありました。2017/08/21
AICHAN
70
図書館本。相変わらず丁寧な描写。そして公判の模様も細密に描かれる。そこで被告は「私は無実です」と言う。真相はいったいどうなのか? 上巻と違ってサスペンス的な内容になっている。上巻よりはすいすいと読めた。サスペンス的な味付けがあるからだろう。しかし、ここ数日のひどい暑さのためなかなか読書の時間を持てず、読了するまで時間がかかってしまった。2019/08/01
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