内容説明
一人のフランス語講師が発見した、歴史の真実
~欧州ヨーロッパで活躍した美貌の公妃が現代に蘇る!~
ルーマニア生まれの作家マルト・ビベスコの自伝的な小説から波乱に満ちた彼女の人生をたどる。 西欧社交界の花として、20世紀を代表する作家マルセル・プルーストをはじめ多数の作家・詩人と交流を持った野心あふれる女性の記録。
★美貌の才女、マルト・ビベスコとは★
プリンセス・ビベスコとなるマルト・ラボヴァリーは、1886(日本では明治19年)にルーマニアの首都ブカレストで生まれ、16歳で結婚、17歳で母になります。美しく教養もあり、ルーマニア語、仏語、英語、独語を操るマルチリンガル。のちに発表する著書は母国語ではなくすべて仏語で書かれました。愛人のいる夫とは距離を置き、社交界で文豪や政治家相手の会話を好みました。その後、彼女自身も多くの恋愛をすることになります。西欧各地から帝政ロシア・米国にまで足をのばし、二つの大戦で戦場になった母国ルーマニアから一度は追放され、最後は亡命することに。1973年、パリで亡くなりました。
まだ女性の政治参画が難しい時代に陰ながら外交活動を行い、数多く著書を出版。文化的活動が認められて、晩年にフランスのレジオンドヌール勲章を受賞しています。
■20世紀前半から文筆活動をしながら外交活動を行ったルーマニア貴族のジョルジュ・ビベスコ公妃。大国に挟まれ翻弄されてきた小国から、西欧の社交界へ。家庭環境と社交界で磨かれたセルフブランディング能力の高さと顔の広さで、非公式ながら第二次世界大戦末期にスイスとトルコで情報伝達と収集役を担う。
■詩人ジャン・コクトー、作家マルセル・プルーストをはじめとする文人たちとの華やかな交友関係や、イギリス史上初の労働党出身の首相ラムゼイ・マクドナルド、イギリス戦時中首相ウィンストン・チャーチルとの出会いもあり、映画のようなドラマチックな評伝となっています。
目次
はじめに
プリンセスとはどんな人?
なぜ作家になったのか?
家系図
交友関係
第1章 ルーマニアのプリンセス
1 学校に行かないお嬢様
2 ルーマニアはどこにある?
3 16歳で結婚、17歳で母に
4 私の旅行(1) ビベスコ邸と離宮
5 マルトのペルシャ旅行と出版
第2章 マルト、パリの社交界へ(1908~1911)
1 ビベスコ一族と芸術家たち
2 マルトの義母、波乱の前半生
3 ドイツ皇太子が夫妻を招待
4 フランス貴族の情熱/夫の贈物
5 私の旅行(2) モゴショアイアの館
6 館修復開始/義母と嫁の約束
第3章 第一次大戦 欧州の変貌(1912~1918)
1 動乱のバルカン/野戦病院へ
2 英仏露か独墺か? 難しい選択
3 パリ社交界のマルト排斥派
4 英国武官登場/館で外交会談
5 参戦 独軍占領下で病院長に
6 占領軍、マルトを国外追放に
7 亡命のストレス/身内の自殺
8 終戦/友人知人に勝者と敗者
第4章 小説『イズヴォール、柳の里』(1923年)
1 柳の村への帰郷
2 復活祭の頃/大昔からの祭り
3 村の女たち/夫選びと因習
4 村人と地主/貴族は革命家?
5 森を薪と思う者の未来は?
6 村の子どもと学校と靴
7 不在地主のエゴイズム
8 厳しい夏/過酷な自然
9 秋から冬/死者と吸血鬼伝説
10 蘇りの春/村に留まる決意
11 マルトにとってのこの小説
第5章 小説『緑の鸚鵡』(1924年)
1 大戦後に女性解放の時代
2 死んだ息子が支配する家
3 緑の鸚鵡が「私」を選んだ!
4 妹の誕生/「私」の結婚
5 夫の事故死/大戦勃発
6 妹の死、異母弟、「私」の出発
7 マルトの想定した読者たち
第6章 小説『カトリーヌ=パリ』(1927年)
1 英仏海峡両側で恋人が待つ
2 パリを選んだ登場人物たち
3 カトリーヌの青春と結婚
4 夫、天邪鬼のアダム
5 パリへ/パイロットと出会う
6 大戦で引き裂かれる恋人たち
7 母の強さ/「エゲリア」願望
第7章 小説『平等』(1935年)
1 英国人と交流/新聞付録小説
2 貴族未亡人と社会主義政治家
3 政治家の愛人/多国籍の公爵
4 貴族と庶民の対立
5 私の旅行(3) ピクピュス基地
6 愛と別れと信頼と
7 マルト・ビベスコの平等感
第8章 マルトの晩年と子孫(1934~2011)
1 映画の原作/跡継ぎの孫誕生
2 独ソの侵攻/夫の死
3 占領下の母国は英米ソの敵国
4 乗り物から衣服まで大変化
5 終戦と亡命/娘夫婦救出劇
6 跡継ぎ失踪/英王室結婚式のパレード指揮官は曾孫
7 マルト・ビベスコ、ヨーロッパ人
マルト・ビベスコ年表
あとがき
文献