内容説明
キリスト者としての西村久蔵の一生を克明に描いた伝記小説。
札幌の小さな牛乳販売店の長男として生まれ、札幌商業学校の教師となり、洋菓子店ニシムラ(後の西村食品工業)を創業した西村久蔵。わけへだてなく人々に大きな深い愛をもって尽くし、著者・三浦綾子にとっても心の師であった久蔵の、キリスト者としての一生を克明に描いた伝記小説。北海道銘菓「ユカたん」「レモンケーキ」などを作り上げた、初期の試行錯誤の様子も描かれている。
1981年(昭和56年)日本テレビ系列で、西村食品工業とそれに携わった人々をモデルにしたヒューマンドラマ「百円ケーキの店」を放送。聴覚障がい者のためのケーキ店を描いた。
「三浦綾子電子全集」付録として、「忘れ得ぬ人 忘れえぬ言葉」のテーマで書かれた主人公・西村久蔵についてのエッセイを収録!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ほうき星
19
久し振りの三浦作品である。いつも思うが、三浦作品には説得力を感じてしまう。クリスチャンであるので、作品の中にもキリスト教にふれているところが沢山あるから、そのためだろうか。私は信仰してはいないけど、解りやすくて、うまく作品に取り入れているから説得力があるんだろうね。主人公の西村久蔵氏は洋菓子ニシムラの創立者、氏の物語である本書、圧巻である。胸をうたれました。2016/09/20
チサエ
7
図書館本。再読、以前読んだのは遥か昔。洋菓子店ニシムラ創業者・西村久蔵の生涯。信仰の熱意と深さ、人々に真摯に向き合う姿、嘘偽りのない歩み、すごかりし。作中から→「クリスチァンという者はね、ストーブのような存在でなければならないよ。ストーブは暖かくて、みんな傍に寄って来たくなるでしょう」2023/06/05
ムトー君
3
洋菓子店の創業者、西村久蔵氏の一代記。タイトルはまさに言いえて妙ですね。愛することに一生を捧げた男性の記録です。彼がいかに人徳者だったのか、多種多様なエピソードを用いて紹介されていました。徹底的に彼は「愛の鬼才」であり続けます。一貫した姿勢には脱帽の一言。もちろん強い敬意を感じずにいられません。ただ読み物としては若干退屈でした。これまで読んできた一代記とは少し毛色が違って、こちらはどちらかというと資料という側面が強い気がします。装飾などの手が加えられておらず、事実のみが謙虚にも連綿と綴られていました。2012/09/05
megumiahuru
2
「あなたは太陽の光を受けるのに、こちらの角度から受けようか、あちらの角度から受けようかと、毎日しゃちこ張って生きているのですか」。頑なに見舞いの品を固辞する三浦綾子さんを、さりげないユーモアで諌めた西村久蔵氏の言葉です。この言葉のとおり溢れる太陽のような神の愛を生きることに徹した西村氏の生涯。別にインドのスラムに行かなくても、私が愛すべき人はすぐ近くにいるのだということを、改めて教えられました。「愛の落第生」である私にとっては、時々本棚から引っ張り出して読まなくてはいけない本です。脱帽。2013/05/25
のんたん
2
ほんまに鬼才、愛の鬼才。下がった頭を上げられない。2007/07/10