内容説明
人間の強さと脆さ、愛憎、生と死を厳しくも優しい視点から描いた傑作中短編集。
作家活動の最盛期にあった著者が、長編執筆のかたわらで、何気ない日常の中に垣間見える、底知れぬ闇を抱えた人間の弱さを描き出した傑作中短編集。平穏な家庭に忍び込んでくる死の影を背負った女の息遣いに、家族の信頼と幸福がもろくも崩れ去っていく姿を描いた表題作「死の彼方までも」の他に、「赤い帽子」「足跡の消えた女」「逃亡」を収録。
1977年(昭和52年)、1983年(昭和58年)の2度にわたりテレビドラマ化された稀代の名作。
「三浦綾子電子全集」付録として、表題作が1977年にテレビドラマ化された時の台本、単行本として出版されたときの記念写真を収録!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちゃま坊
11
短編集。戦前の樺太のタコ部屋から脱出に成功する話「逃亡」を読みたかった。逃亡ドラマは昔から好きなジャンルだ。ハラハラドキドキが続き、成功したときの爽快感がたまらない。他の3編は悪女と不幸な母子の話。★2018/03/21
gtn
5
全編、隣人を信じようとするが裏切られる、隣人を救おうとするが裏目に出るというストーリー。「諦観」という言葉さえ思い浮かぶ。ただ、どれも心に刺さる短編である。2018/01/10
Emma
3
他の三浦綾子作品とは違った作風。重暗く、救いがない感じで…。とはいえ面白い。表題作は最初七重にイライラ、「赤い帽子」はオチが怖い!「足跡の消えた女」は主人公の夫が終始津奈子を庇っていた理由を知りたかった。「逃亡」はとにかくハラハラして、私も逃げるタコのようにすごいスピードで読みきった。2019/12/17
あつひめ
3
三浦さんの作品を初めて読みました。生さぬ仲での心の葛藤相手は元妻?子供?それとも夫?道ならぬ恋の犠牲でもっともっと愛をもらいたいと思う子供、人を信ずる心との葛藤、人を人とも思わない扱いをする時代・・・どの物語の中にも人を思いやる心が潜んでいるように感じました。もっと他の作品も読んでみたいです。2009/10/18
ミカママ
2
三浦綾子さんの中短編集。どの作品も読みやすく、それでいて読後にずしりとくる物語ばかり。三浦さんが亡くなってもう10年以上経つんだなぁ。2012/03/03