内容説明
自己本位にしかものを考えることができない人間の悲劇。6つの作品からなる短編集。
性愛に奔放な元小学校教師の加代は、真実の愛があることを信じない(「井戸」)。入院中の療養所の裏山で性愛におぼれて妊娠してしまう霧子(「足」)。東京を離れることをいやがり実家に帰ってしまった妻に対し、つつましやかな女性に惹かれる慎二だが(「羽音・1969年(昭和44年)にテレビドラマ化」)。少年・清志は家出した母の面影を優しい女性教師に見るが(「奈落の声」)。金と情欲に支配された人たちに翻弄され続けた美津子は不幸のまま……(「どす黝き流れの中より」)。研究室が火事で全焼した後、精神に異常をきたしてしまった夫を支える明子(「病めるときも」)。人間の弱さと罪深さを描いた6つの短編集。
「三浦綾子電子全集」付録として、出版ニュースに載せた「わが著書を語る」、講演写真を収録!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
88
傷ついても前に進もうとする人たちの姿が伺える短編集でした。全編を貫くテーマは「愛」。一言で愛と言っても、貧困、病気、信仰を通じて語られる愛が描かれています。そこには人生があり、同じキリスト者として考えさせられることも多くありました。改めて愛の中で生きることを示された気がします。2017/07/28
じいじ
73
『塩狩峠』の長編ほどではないが、「愛」をテーマにした6つの短篇集は面白かった。ここで何を紹介するかは、躊躇うことなく【表題作】になりました。甘々な恋愛小説かと早合点してしまう書き出しでしたが、しっかりと芯が貫かれた良い小説でした。夫婦も十人十色。夫婦とは?ー少し遅いですが私もじっくりと考えさせていただきました。そして 負けず嫌いの主人公・明子を、いつのまにか応援していました。彼女の勝ち気なところは、幼児たちの英語塾経営で頑張るわが娘と重なります。つぎの三浦小説は、何十年ぶりに読む『氷点』が愉しみです。2025/02/16
かよぴー
40
昔 読んであまりいい印象でないのに、忘れられない題名だったな〜と再読したくて中古で購入。、書き方変えたら話は今で言う「イヤミス」。テーマーは愛なんだけど、貧困、病気、信仰を通しての話。親子、夫婦、師弟、または他人に対してどこまで愛せるか?と問われてるようで、若い私には無理と考えたと思う。表題の「病めるとき」精神を病んでしまった人、血の繋がりのない子供やっぱり今読んでも、貴方はどう?と言われてるようで、逃げ腰の私がいる。でも「ごめんなしゃい」が心に響きます。とても読みやすい短編6話なのでオススメです。2016/10/06
金吾
34
○透徹した愛というものを見せつけられるような短編集です。かなり論外に思える異性に対してこのような行動をすることは自分には出来ないと思いながら読みましたが、平安を考えながら感銘は受けました。表題作が良かったです。2023/05/30
ねこまんま
19
神様は負えないほどの荷物は決して負わせてはいらっしゃらない、と言うが、負わざるを得ないし無理なら死ぬしかないんじゃないか?明子は一見、損で不幸な人生のようだが、幸せを感じられるとはなんと崇高な精神だろう!2020/01/24
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- 週刊SPA! 2016/6/21号