内容説明
世界でいちばん短い詩――俳句。日本独特の短詩型文学における、主として切字の考察を通して日本語の豊かさを実証し、「省略の詩学」としての魅力をも解明する日本語論の先駆的名著。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
y_nagaura
8
「いひおほせて何かある」とは芭蕉の俳句論。切字がもたらす漢文的・楷書的効果、点描画的省略性を軸に俳句論が展開される。そこで浮かび上がる俳句の特異性たるや!過去の句を借用する借景句(和歌でいう本歌取り)や季語による深み、映画のモンタージュ理論を俳句から得た(かもしれない)ことなど、興味深い話が満載。難点は、『省略の文学』と『俳句の詩学』をまとめた経緯から、重複する箇所が多数見られる点。重複する箇所が重要なのだ、と復習する意味で読み流しましょう。2018/10/03
もろちゃん
1
ヨーロッパの詩は論理的、建築的であり積み重ねていくことで作られる。偉大な詩に長篇が多いのはそのためだ。対して日本の詩歌、特に俳句は余分なものを切りつめる。では十七字という限られた字数の中で表現が可能となるのは何故か。それが「切字」であり、空間の利用である。詩と俳句とを比較しながら論を進め、俳句の持つ特異な性質について考察する。2011/01/01
キテレツ
0
本書を読んで俳句というものに初めて興味を持ちました。共鳴箱という空間があるおかげで楽器の音がよく響くように、「切る」ことによって生まれる余韻や残像。更にまったく別の言葉を並べることによる超論理的結合ともいえる複雑なイメージ。また、強烈な起爆剤としての季語の大切さ。たとえば「月がもっとも月らしく、しみじみ感じられるのはどの季節かという限定化」によって得られる効果。その他にも言葉による表現に関する示唆に富んでいて、個人的には大変衝撃的な内容でした。引き続き俳句というものを勉強してみたくなりました。2014/09/02