内容説明
舞台はどことも知れぬ惑星。数百メートルの巨大な鉄柱に支えられた小さな甲板。そこに“会社”が建っている。語り手は日々、そこで異様な有機生命体を素材に商品を手作りする。雇用主である社長は“人間”と呼ばれる不定形の大型生物だ。甲板上と、それを取り巻く泥土の海だけが語り手の世界であり、そして日々の勤めは平穏ではない。はるか泥土の海を渡って襲い来る“外回り営業”との戦い、脳裏にフラッシュバックする、自分のものかどうか分からぬ記憶……。そしてこの惑星自体が、最終的に何かを生み出すために存在したのだった。奇怪な造語に構築された、誰も見たことのない世界を構築するSFセンス! 応募総数594作から大森望・日下三蔵・堀晃が選出した大型新人。作者自筆のイラストを付す。第2回創元SF短編賞受賞作。選評・電子書籍版特典画像をダウンロードできるID・パスワード付き。(本電子書籍は、『年刊日本SF傑作選 結晶銀河』(創元SF文庫版 2011年7月初版発行)に掲載の、受賞作短編である「皆勤の徒」を電子書籍化したものです。同名の書籍(『皆勤の徒』 創元日本SF叢書版 2013年8月初版発行)及び、『結晶銀河』全ての電子書籍版ではございませんので、ご注意ください。)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みっちゃん
51
上田早夕里さんの【華竜の宮】と同じ世界観の短編が収録、と知り読んだのですが、一番衝撃を受けたのは長谷敏司さんの【allo,toi,toi】でした。少女を性的虐待の末に殺した主人公に、まず生理的嫌悪感が。彼に虐待を続ける刑務所の囚人の「社会正義から外れた者には何をしてもいい」という態度にはもっと気持が悪くなります。脳に埋め込まれた機器との「会話」で「人は何故異常な愛情を抱いてしまうのか」内省する男に訪れた残酷な結末。後味の悪さに心が乱されました。2013/09/07
巨峰
41
再びSF短編集。こちらは傑作佳作揃いで驚きがありました。 1作覗いて全部良かったのですが、特に良かったのを上げます。単行本を読んだことのある作家で良かったの沖方丁さん、上田早夕里さん、月村了衛さん。ほぼ初読でよかったのは、長谷敏司さん、小川一水さん、伴名練さん、谷甲州さん。2024/11/03
ポルコ
36
小川一水さんの『アリスマ王の愛した魔物 』幼い頃から算術に長けたアリスマが、恐ろしく巨大な算廠を立て何百万もの人間を計算機械にした、いわゆるスパコンファンタジー。『京』の中に脳が焼き切れてハゲた人がいっぱい詰まっている光景を想像して笑えた。津原泰水さんの『五色の船 』 欠損のある集合体である彼ら家族が戦中、くだんと言う未来の見える獣と出会う。平衡世界の概念もあり、どんよりとした和風SFながらも、ほっこり要素もあり好き。2025/06/26
あなほりふくろう
25
収録されている1編1編のどれもが半端なく濃くて、1日1、2編のペースでゆっくりじっくり噛みしめた。うぷちんの軽いジャブから始まり、上田早夕里、津原泰水、白井弓子の異形3連発のあとの機龍警察が息抜きという、このビックリな重厚感。山本弘「アリスへの決別」と長谷敏司「allo,toi,toi」を並べるこの挑発的態度。編者である大森・日下両氏のセンスも光ってる。すごい1冊だった。個人的ヒットは小川一水「アリスト王~」、上田、長谷、伴名練「ゼロ年代~」。2013/06/22
芍薬
18
「皆勤の徒」がすごすぎて自分が何処にいるか見失いました。やっぱり私は「アリスマ王の愛した魔物」「五色の舟」なんかが大好きです。2014/04/22