内容説明
サントリーの部下が描く、山口瞳の原風景。
日本の高度成長が始まる昭和33年、失業中の山口瞳は、寿屋(現・サントリー)に入社し、宣伝部でコピーライター・PR誌「洋酒天国」編集担当者として多忙な日々を送ることになった。そして37年、著者が新卒社員として寿屋に入社すると、直属の上司は、「宣伝技術課係長・山口瞳」だった。サラリーマンとしてマジメに勤務しつつ、「江分利満氏の優雅な生活」で直木賞を受賞した山口瞳は、会社員として、社会人として、男として、人間として、そして作家として、どう生き、どう身を処したのか。『「洋酒天国」とその時代』で第24回織田作之助賞を受賞した著者が生き生きと描く、作家・山口瞳の原風景。
感想・レビュー
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さっと
10
山口瞳は専業作家となるまえサントリー(当時は寿屋)でサラリーマンをしており、著者のサントリー入社時の直属の上司で、タイトルの係長は当時の山口の役職から。本書ではサントリー在籍中の直木賞受賞作『江分利満氏の優雅な生活』や、30年以上休載なしの週刊連載エッセイ「男性自身」、自身を色濃く反映した妻と愛人の三角関係を描いた『人殺し』などをテキストに、サラリーマン時代に培われた処世術から作家をひもといていく。私は全国地方競馬場をめぐった『草競馬流浪記』から入って、それら代表作は未読だが、おもしろく読めた。2021/06/27