内容説明
代筆を生業とする中川恭次郎は、列車の中に鶯色のリボンと庇髪の少女を目撃し、愕然とした。あれは田山花袋の小説に出てくる少女ではないか。恭次郎と井上通泰は、探偵もどきの冒険に身を投じることになる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Bugsy Malone
64
著者原作の漫画「黒鷺死体宅配便」のスピンオフのスピンオフ。主人公の中川恭次郎始め柳田國男の兄、井上通泰や田山花袋など実在の人物が謎の自死事件を推理する。著者の「木島日記」的なものを期待していたけど、時代背景は近いもののまた違った感じの本でした。とはいえ実在の登場人物が憎めない人達ばかりで、その辺のコミカルなやり取りに何度も笑ってしまった。ただ根底にある柳田國男と少女、他の登場人物との関係がこの本だけでは分かりにくい。田山花袋の「野の花」を先に読んだ方がもっと楽しめたのかもしれない。それでも面白かったです。2016/07/13
dr2006
37
明治後期の文壇を舞台にした探偵小説。主人公ではないが当時の田山花袋や岡田美知代、柳田國男等実在の作家が沢山出てくる。丁度最近、田山の蒲団をモチーフにした中島京子のFUTONを読んでいた為、相関や背景はすっと入ってきた。半ば作家の道を諦め代筆を生業としていた主人公中川恭次郎は、ある日、田山の小説に出てくる少女に酷似した女を見かける。ただ、この世のものとは思えぬその美姿は直ぐに消えてしまった。恭次郎は文壇の仲間井上通泰を訪ね、その少女の謎を探ることになる。本作の様なタッチで文学史や文壇を知る事ができて楽しい⤴2021/11/09
miroku
27
本編に登場せぬ柳田国男のフィールドで踊る主人公たち。ふむ、ある意味人形浄瑠璃の如し。田山花袋の少女病ぶりもいと可笑し。大塚英志らしい作品なり。2015/04/24
瀧ながれ
23
主人公たちが事件の謎を解き明かすミステリーなのか、怪事件を目撃して怯えるホラーなのか、と探りながら読んだら、タイトル通り、「奇っ怪なる冒険」をする作品だった。明治の東京の、和洋入り交じった風俗とか、発展途上の埃っぽい空気とか、いまも名前の残る文壇の人たちの消息とかに、幽霊とか呪いの妖しさがうまく同居していて、とてもおもしろかった。いや実は、やいちくんが元気で楽しそうで、それだけでも嬉しいのです。2014/12/12
じゅんぢ
22
もともとシリーズ化ありきで書かれている為かいろいろ説明不足の様な気がする。2018/04/29