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内容説明
武士の革命としての明治維新。農村地主の運動としての自由民権運動。男子普通選挙制を生んだ大正の都市中間層……。しかし、社会的格差の是正は、自由主義体制下ではなく、日中戦争後の総力戦体制下で進んだというジレンマをどうとらえればよいのか。「階級」という観点から、明治維新から日中戦争勃発前夜までの七〇年の歴史を、日本近代史の碩学が描き出す。(講談社選書メチエ)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きいち
28
若々しい提言の本。◇日本が平等を実現したのは無条件降伏による農地改革など一連の占領軍の改革によるもの、という通念に対し、いや、それは総力戦体制で実現していた、という見方が進んでいる。坂野は明治以来の政治的平等と社会的格差是正のタイムラグを追うことで、総力戦などなくとも選挙による平等の実現はできたのでは?と可能性を提示する。◇自分が最近追ってきた宮本常一の戦前の農村ルポや綴方教育運動の地方での進展からすると、30年代は確かに暗黒の時代ではない。そしてそこで育った人材は強固な階級社会を崩せたかも。納得度高い。2015/01/20
樋口佳之
10
社会的な変化が政治的変化となって現れるのには、時間がかかる。この「時間差」を忘れたことが、社会経済的「土台」が政治や法律などの「上部構造」を規定するという「史的唯物論」の信頼を失わせた原因ではなかろうか。2017/01/20
Happy Like a Honeybee
7
納税学を引き下げても、民意を反映していないと。幣原外交と統帥権干犯問題。階級が多様化することで政治が分裂。1930年ロンドン軍縮から1932年五.一五事件にかけて民意は拒否を表明していた。しかし様々な工作により、挙国一致内閣、国際的孤立などその後の歴史はご存知の通り。平和だから自由が謳歌できる現実を受け止めなければ。2015/07/31
BLACK無糖好き
7
日本の高度成長と社会主義諸国の衰退から、日本近代史が「階級史観」を失ってしまった今日では、「社会格差」の是正の知恵を歴史から学ぶことは不可能である。といきなりバッサリ切られる^^;。近年の研究では、社会格差是正は自由主義体制下ではなく、日中戦争勃発後の「総動員体制」下で進んだとされるが、著者は日中戦争勃発前に選挙での社会大衆党の躍進と、当時の進歩知識人による評価に焦点を当て、戦争がなくとも総選挙を通じて議会主義的に格差是正に向かっていたと説く。こういう視点は参考になりました。2015/01/13
軍縮地球市民shinshin
6
結構勉強になった。著者によると最近は戦時体制が「社会的平等」を却って促進させたという説があるようだ。雨宮昭一がその代表格で、曰く「経済も配給になったが、それは却って富める者には少なくなったが、貧しいものには今までよりも増えた」ということらしい。そういえば、山深い山村では米が採れない為、今まで口にできなかったが、戦時下になり配給で口にすることができるようになったという証言もある。著者はそれに敢然と批判する。「自由」がない「平等」や「平和」はいらないと。その通りだと感じた。つづく。2015/05/23