内容説明
難事件を無事解決したと安堵する刑事や、完全犯罪をやり遂げたとほくそ笑む犯人の前に、「仕損じたね」と告げながら、全身がグレイ一色でつつまれた謎の男・幽霊紳士は現われる――異色の名探偵が謎を解き明かす、どんでん返しの趣向に満ちた全12話で構成される『幽霊紳士』。若き日のホームズの活躍を描くパスティーシュから、創作に悩むヒッチコックが体験したアパートでの冒険譚まで、世界を舞台にした奇妙な8編を収録する『異常物語』。時代小説の大家による、本格ミステリ連作集と長らく入手不可能だった奇想に満ちた短編集を、合本で贈る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くさてる
27
わあ、これどういう話なんだ。殺人事件が一応の解決をみた……あとに「仕損じたね」と現れる灰色づくめの幽霊紳士。ミステリなのは間違いないけど、どこか奇妙な味。でもドラマの味つけはあくまで昭和の世相風俗にのっとった人間臭いものなので、それらがぜんぶ混ぜ合わされて令和に読むと、とても奇妙で不思議な話に思えます。面白かった。2021/10/23
geshi
23
かの柴田錬三郎がミステリーを書いていたとは、という驚きで手に取ったが、内容もなかなかに良質。エロティシズムのある内容に旧来の道徳観がなくなった1960年という時代を感じざるを得ないが、先入観をひっくり返す手腕はさすが。メフィストフェレスめいた名探偵が真実を告げる者として出てきて話を急転直下させる、少し反則っぽい切れ味。『異常物語』はホームズパスティーシュありヒッチコックありのバリエーションが面白い。オチが似たような話が多いのは気になったけど。2014/11/20
ken_sakura
21
普通。カッコ良い。事件が解決した。謀り事が上手くいった。その時、「・・・仕損じたね」と全身を灰色に装った幽霊紳士が現れる♪( ´θ`)ノ漫画「哭きの竜」の「背中が煤けてるぜ」を思い出した。読者として多くの物語を読んだであろう著者の、通の見識のようなものを感じる吟味と趣向を、もの知らぬなりに楽しく読んだ(^_^)幽霊紳士連作短編12編。「女子学生が賭をした」が好き。居酒屋でちょっと気持ち良く著者の語りを聞いているような異常物語8編。「生きていた独裁者」が良かった。計20編。2018/03/03
ひなきち
21
柴錬のミステリ、面白かった〜(^^)「…仕損じたね」という決めセリフと共に現れる『幽霊紳士』。読者をミスリードしつつ、あとから別の角度で真相が解き明かされる手法で、なおかつ私の好きな連作短編!気にいりました。『異常物語』も風変わりでしたが、最後があやふやな感じ…だったかも。とにかくエロをエンタメに変えるのがすごく上手です(笑)これからも少しずつ柴練作品を読み進めていきたい。2016/04/29
Kouro-hou
21
連作短篇集「幽霊紳士」「異常物語」二本立て。「幽霊紳士」は事件解決!となった所でいきなりヤッチマッタナーと言って現れる灰色のダンディ。探偵役の思い込みや盲点を指摘して結末をひっくり返して消える超常的存在である。それは後出し…と思うこともありますが中身は本格推理仕様。登場人物や関係者が次篇の主役になるのが特長。完全犯罪を仕組んでヤッチマッタナーされたりする事も。殺し屋の流儀の解説に眠狂四郎を使ったりする辺りが柴錬ファンにはニヤリ。この本が評価されれば柴錬の本格推理モノがもっと出るかも、と煽り気味解説も良い。2015/01/06