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内容説明
初訳から60年、まったく新しい「老人」の誕生! 数カ月続く不漁のため周囲から同情の視線を向けられながらも、独りで舟を出し、獲物を待つ老サンチャゴ。やがて巨大なカジキが仕掛けに食らいつき、3日にわたる壮絶な闘いが始まる……。原文を仔細に検討することによって、従来の活劇調の翻訳とは違う「老人」像が浮かび上がる! 決して屈服しない男の力強い姿と哀愁を描いたヘミングウェイ文学の最高傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
191
スタンダードの新潮文庫・福田訳に続いて読む。まず一読、読みやすくて非常に印象に残る文章である。「現在」の日本語に、見事に移し替えられているな、と思った。サンチャゴの心の動きにスッと入り込めるし、野球やラジオの話など、初読のときには気がつかなかったが、それが時代を見事に表現していると思った。文学研究的には、1950年9月と特定されているそうである。心の中で、「老人と海」(中山千夏・詞、小室等・曲)をBGMにしながら臨場感たっぷりに読んだが、歌にも移されている通り、老サンチャゴは海と魚たちを愛していたのだ。2015/02/23
nuit@積読消化中
122
再読。幼少期に読んだ時は老人が鮫と闘っているところが印象強く、男臭い物語とばかり思ってましたが、大人になって読み返すと、老人のひとり言一つ一つにハッとする部分があり、またある部分では頷ける自分がいます。最後の「負けてしまえば気楽なものだ。こんな気楽だとは思わなかった。さて、何に負けたのか」のセリフを自然に言えるような悟りの境地に早く達したいものです。また、老人を気にかける少年がとてもとても本当に良かったです!2017/05/20
マエダ
116
2日かけて18フィートにも及ぶカジキとの死闘、”少年は老人にその歳で海にでるのは変わった年寄りだと言った。”老人はこの大物を釣ることによって自分が少年の信じる変わった年寄りだと証明できる。”そんな証明は、もう千度もしただろうが、だからといって意味はない。今一度、その証明をしようとしている。”老人の船で何度も口にする「少年がいたらなぁ」が心にしみる。2016/04/02
優希
96
美しい話だなと思いました。漁師・サンチャゴはひとりで船を出し漁をしている姿に芯のある強さを感じずにはいられません。周りに同乗の目を向けられても自分の闘いに挑んでいる姿が印象に残ります。何事にも屈しない力強い老人の姿に胸を打たれずにはいられません。落ち着いた文章の中に感じる静かな力強さが好きですね。2014/09/23
HANA
90
カジキ漁のために海に出た老漁師が帰宅するまでの三日間を追った小説。ただそれなのにこの濃密な文章はどういったものなのだろうか、ただただ老人の行動とつぶやきを通して語られる彼の内面に硬質な文体と共に圧倒されるだけであった。読み終えて最初に浮かんだ言葉が「誇りある敗者」。量の結果こそああなったものの、矜持まで折られたわけじゃない老人の姿が、ラスト一行も含めて本当に格好いいのである。ヘミングウェイがハードボイルドの祖とされているのも納得、ハードボイルドに必須なのが事件ではなく生きざまだと確認させられる一冊でした。2020/07/30