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内容説明
個人が政治の情報を集め、投票先を主体的に、合理的に選択すれば、政治はよくなる――。そのような政治観は幻想に過ぎない。自分の思う通りにならない他者と、人間の非合理性に注目し、政治を組み立て直す。理性を重視する従来のパラダイムではこぼれ落ちてしまう現実の政治を気鋭の政治学者が描き出す一冊。(講談社選書メチエ)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
またの名
8
投票行動はコストを計算すると合理的ではなく、従って民度の低い愚かな人間がすること、みたいな結構過激な研究結果や資料を縦横無尽に引っ張ってくる挑戦的な試論。スタートレックやAKBを参照しつつホルクハイマー、タルド、カネッティ、フロイト、ホッブズ、F・フクヤマ、ルーマン、アレントに加え数々の実証的データを投入してくる著者を駆り立てるものもまた合理化できない情熱であるなら、論証の仕方が従来の合理主義的な政治学にとって逸脱に見えるのも仕方ない。他人に冷たく信頼を持ってないと統計が示す日本人に、信頼の政治は可能か?2015/04/13
Masakazu Fujino
3
非常におもしろかった。『野党論~何のためにあるのか』で話題の吉田徹氏が、2014年に出した本。合理性だけで政治を捉えることはできず、「感情」が作用して政治が生まれるようになる。人々の政治的覚醒も私的な空間での政治意識の萌芽が近しい他者を通じて公的な政治参加へと転化していく。人はなぜ政治に参加するのかそのキーワードは「関係性」。「群れる」そして「恐怖」と「信頼」、様々な示唆を与えてくれた本でした。2016/09/28
marukuso
2
これまでの学問は理性一辺倒に考えられてきたが、今や感情を考えることなしで物事を語ることはできなくなった。なぜ人は政治に関わろうとするのか?という根源的な問いに感情をキーワードとして考えたのが本書である。人と人との関係性、恐れ、群れ、信頼といったテーマ別の観点から政治を考える。感情という非合理的とみなされてきた部分を改めて取り入れることで人間像を捉え直すことは意義があることだろう。逆に読んでいて至極当たり前なことを今まで無視して考えてきていたということも思い知らされるのであった。人間は不思議な存在である。2015/10/18
三上 直樹
2
政治とりわけ選挙に行きどの候補に投票するかは政策の判断などよりも感情が支配する部分が大きいこと、そしてそのことを悪とか時代遅れを考えるのではなく、信頼を生み出す方法を考えるべきことを、感情ではなく理路整然とまとめた内容。 何といっても、正しい政策を主張すれば選択してもらえるはずだというのは、市場原理にもとづいた等価交換しか生まない手法だと断じていますが、そこに政治の難しさ不可思議さがあるのを痛感します。2015/06/02
hobby no book
1
幅広い分野からの参照・引用もあって、刺激的な内容だった。ベースとなる思想というか考え方は比較的シンプルだったので、多少難解な部分も読み進むことができた。面白かった。2017/05/28