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内容説明
軍歌は、日本史上、最も国民の心を掴んだ音楽だ。初めての軍歌「来れや来れ」が登場した一八八五年から終戦の一九四五年までに作られた曲は一万超。軍歌は、政府にとって国民を戦争に動員するための道具であり、国民には最も身近な娯楽、レコード会社・新聞社・出版社には、確実に儲かる商品だった。一九三七年の「露営の歌」は約半年でレコード売上六〇万枚超の大ヒット。一九三八年のミリオンセラー「愛国行進曲」は、第二の国歌といわれる定番曲となった。そこには、今では怖いイメージがつきまとう軍歌のまったく違う姿がある。誕生から末路まで、史上最大の大衆音楽の引力に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
116
今の歌謡曲の原点に軍歌ってなるんかな?と思った。2014/08/09
ころこ
39
テクストによる再現性が劣るので音楽は本が出版され辛いことに重ねて、軍事という音楽の負の側面にあえて光をあてた戦略性に感服します。言われてみればその通りという批評性とシンプルなタイトルのどぎつさの(アン)バランスも露悪的で著者らしいと思います。近著の『新プロパガンダ論』に連なる方法論は一貫しており、メディア論のシリーズとして読むことが出来ます。あえて言うと、歌詞と制作の周辺事情の比較文化的な側面が語られるのみで、集団的な作業や規律に音楽がどの様に有効かという様な曲に対するアプローチが不足しています。2021/03/17
ヨーイチ
37
軍歌とか軍隊が好きな訳では無い。自分には無縁の物と思っている。但しこれとても歴史、風俗の一部であり、知っておいて損は無い。「軍歌はエンタメ」ってのが著者の売りなのだが、正直よく分からなかった。小生としてはエンタメだとしても「その理由」の方に興味がある。色々考えさせられた。そういう意味では面白かった。無理筋で言うと「曲が欲しかった」(笑)。「歌」ってのは聴く物と言うより「一緒に歌う物」だったという事を思い出した。昔は結構「一緒に歌う」機会があった。ましてや戦前はもっと多かった筈だ。続く2016/03/09
しゅん
21
1945年に至るナショナリズムが明治から綿々と連なってること、国粋主義の西洋由来であることが「エンタメ」としての軍歌からクリアに見える。20代でよくここまで調べて、マニアックに終わらせずに書いたものだと素直に思う。『父よあなたは強かった』の「泥水すすり草を噛み」というリリックを読んで米国士官が反戦歌だと勘違いしたエピソードは、日本文化が「飢餓」や「我慢」にポジティブな価値を与えてることの非普遍性(別に当たり前じゃないこと)を証明してるようで面白い。2021/04/14
やまやま
19
音楽を用いて列強に負けない日本というナショナリズムを鼓舞するという、外山正一と伊沢修二の目論見は見事に成就したようにも思えるが、目論見ですべては動かないこと、また歴史の淘汰力の強いこと、などを鑑みると、歌い継がれる契機はその歌に「共同体の利益があった」というまとめは理解しやすい。政治と音楽のつながりは他著でも丁寧に述べられているが、軍歌は戦争の遂行に役立つという意味合いが特に日本語の歌詞とのつながりで感じられた。英米撃滅の歌は洋楽史のバッドエンドと著者ならではの解説である。2021/12/26