内容説明
「俺は、多分、なんだって、視える」 「僕は、大体のものは、つくれますから」 皮肉屋の青年・叶義は幼い頃、あやかしの神隠しに遭って以来、いかなるものも“視えないものはない”という。妖しい美貌を持つ飴細工師・牡丹はその手で“つくれないものはない”という――。 二人の青年が営むは、世にも不思議な妖怪飴屋。奇妙な縁に惹かれた彼らは、祭り囃子の響く神社で今宵も妖怪飴をつくりだす。人と寄り添うあやかしの、形なき姿を象るために。あやしうつくし、あやかし飴屋の神隠し。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ダリヤ
104
贈られてきてくれた大切な本。このような機会がなかったら出会わなかったかもしれない。はかなげで、なつかしく、にぎやかな祭りの気配が本の中でひろがり、あやしげな妖怪飴屋がひっそりとお店をひらいてる。牡丹がうみだす飴細工のうつくしさ、この目でたしかめられたらいいのに。蜜香の潔く、前向きな性格がとてもすき。2014/10/21
しずく
88
ごちそうさまでした。とても美味しかったです。お祭りに漂う刹那の危うさと妖しさ。叶義の話はすごく深かった。個人的には蜜香が好きではあります。「やり直せばいいんじゃないですか。でも、そうしたら。ーーきっと僕らは出会わない」やり直したい、そう思うことは誰だってあるはず。生きてれば後悔だってする。でも、悪いことばかりではないんですよね。想い返せば、美しい想い出も出会いもあって、此処にいる。だからきっとやり直しなんていらないんだろうなぁと思います。飴と同じですぐに割れてしまうようなものでも、等しく美しいのですから。2014/08/03
ひめありす@灯れ松明の火
85
行きは良い良い、帰りは恐い。妖かしと人との契はまさしくそれ。これは怖いながらも帰ってきた、少し壊れた青年と青年の物語。夏祭りの夜は人と妖かしの、異界と現実の堺を曖昧にする。飴細工を見た事があるか。塊が手の中、やわらかく伸びて徐々に姿を作りだして行く様は、まるで妖かしがこの世に姿を表す時の様で。繰り返しにじり寄る恐怖。姿が見えれば怖くない。形が掴めれば怖くない。でも全てが妖かしのせいではない。人間と半分この罪。飴は分けられないけれど。ありがとう、ごめんなさい、さようなら、とそう言えれば、よかっただけなのに。2015/03/29
ううち
70
初読み作家さん。暗すぎず落ち着いた雰囲気で不思議な優しいお話でした。続きが出たら読みたい。飴が食べたくなって、べっこう飴を買ってきてみた。2014/12/01
BlueBerry
66
最近ありがちなお菓子と妖物の混ざった感じの推理小説。紅玉いづきさんだからどんな風か楽しみだったけれど他の似た物達との差異はあまり感じられなかったと思います。確かに紅玉いづきさん風味は出ているんですけどね・・。そこそこは楽しめるとは思います。2014/09/06