内容説明
【第6回中央公論文芸賞受賞作】一緒に暮らす純一郎さんは、やさしい人だ。出張が多くて不在がちだけれど、一人息子の太郎をよく可愛がっている。じゅうぶんに幸せな親子三人の暮らしに、ある日「川野純一郎の本当のことを教えます」と告げる女から電話が舞い込み――(「遊園地」)。行ってはならない、見てはならない「真実」に引き寄せられ、平穏な日常から足を踏み外す男女を描いた七つの物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
269
そっちに行ったら傷つくってわかってても引き込まれちゃうのが人間...というような短編集。やっと物語に慣れたと思ったら次の作品、みたいな流れでなかなか入り込めず、慌ただしく読了。2017/05/10
ケイ
154
7つの短編のうち最初の「遊園地」だけに、そこへは行くなというタイトルの言葉が響きこだました。行ってしまう、言ってしまう。知りたくないことを知る恐怖も、このまま中途半端に幸せでいようとする焦燥に勝ってしまう…。それでもわたしもこの男に惚れてしまうだろう。その後の5つは、読んでいてイヤ〜な感じがした。そうさせる作者の筆。最後の「病院」はとても好きだ。ツラいが、どこか前向きにさせる父と母の言葉が、暗いところに少年を引きずりこまない。1つの光が消えていったのだとしても、クリスマスの贈り物があったように感じられた。2017/05/24
優愛
90
曖昧な終着点に流れる微かな恐怖と妖しげな感情。愛しているから追いかけてしまう。行ってはいけないと分かっていながら、知ってはいけないと分かっていながら真実というその場所へ――。本当は"このまま"で良かった。今のままで良かったのに。私達人間はどうしたってその陰に手を伸ばしてしまうんだ。裏切りは痛くて、苦しくて。だけど気づかない振りが出来なかった自分をどうか責めないで。最後を放り出された感が正直否めないですがこれが逆に良さを出しているのかなとも思えます。機会があれば長編も読んでみたいと思えた作家さんでした。2015/07/18
おくちゃん✨🎄✨柳緑花紅
87
タイトルがなんといっても秀逸。最初から最後まで不穏な空気、心がザワザワ。気付いていても気付かないことにしてしまおうする私の中の私。口に出してしまいたいけど、ぐっと飲み込む気持ちや言葉。見てはいけない、行ってはいけない、そこについ・・・・最後の「病院」は身近に同じように病気を抱えている友人とその家族がいるので、引き込まれつつ胸が痛んだ。井上荒野さんの作品に目が離せない。2015/07/02
じいじ
81
『そこへ行くな』—私は時に天邪鬼になります。タイトルに惚れて買ったのに、7.8年も書棚に入れっぱなしでした。先日の断捨離でも、荒野さんの本なので残しました。短篇7つ、1篇目の【遊園地】で男の優柔不断と女のイライラする我慢強さで、胸のモヤモヤが爆発寸前まで達しました。つまらない箇所は少々飛ばしましたが、最後の【病院】まで辿り着きました。皮肉もたっぷりで、切れ味鋭いいつもの荒野小説でしたが、少しばかり肩がこりました。2023/08/22




