内容説明
寄席にさえ出してもらえず、野天で上演──貧民窟で生まれ、差別されつづけた浪曲。だが、一人の男が、すべてを変えた。歌舞伎座公演、皇族御前公演。落語も講談も吹き飛ばす、浪曲全盛時代がやってきた! 明治から大正を怒濤のごとく駆け抜けた四三年の生涯を、演芸研究家の曾孫が愛情をこめて描いた決定版評伝。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
姉勤
38
明治期。欧米化への反発心から大衆は伝統芸能に流れ、特に労働者に親しまれた、浪花節。貧民街の実家の生業から自然に浪曲師になった繁吉は、凡百の芸人でない自信と出世の工夫を見出せない葛藤を抱えたまま東京で唸っていた。転機は浪曲には欠かせない三味線の伴奏者「曲師」が師匠の妻であった事で、彼の波乱の人生が回転していく。過去と決別するため桃月庵雲右衛門と改名し、東京を離れ辛亥革命に関わった宮崎滔天を弟子にし、辿り着いた九州で売れ出す。独自のスタイルを確立、東京に凱旋し、名実ともに日本一の浪曲師となるが…芸人は哀しいな2018/01/20
カサブランカ
5
読後とにかく声が聴きたくなり、幸いネットで聴くことができた。当時第一人者の噂の通り、切れ目のない抑制の利いた声に、登場人物の感情も豊かにこもり、物語に完全に引き込まれる。最盛期には他の芸能を凌ぐ観客動員を記録し、歌舞伎座公演も満員に。しかし生来の食の細さが祟り、徐々に病魔が忍び寄り、結核で44歳で急逝された時には、借家にわずかな手持ち金という最期に胸を衝かれた。生前公演の上がりから社会事業に多大な寄付を続けられているのにも雲衛門さんの人柄をみる。死後100年に捧げられる曾孫渾身の一冊に、以て瞑すべし。2018/05/07
カッキー
2
どうしても声が聴いてみたくなり、you tubeで検索してしまいました。レコードで聴いたその節は、高音の伸びが独特でモンゴルのホーミーのように感じました。浪曲に興味の無い人がなかなか手に取らない本だとは思いますが、この様な前衛的な芸を持つ人が、いかにして人々の中に膾炙して行ったのか知ることは、私にとって十分に意味がありました。特に、九州の人々は前衛的なものを好むと聞いたことがあったので、雲右衛門の転機となったことも面白いなと思いました。2015/07/11
Oke
2
浪曲を聞いた事ほぼないので、どんな風に語られていたのかイメージできないのが残念だった。芸人の名前や当時の新聞記事にルビや意訳があると分かりやすくなって良かった。2015/01/07
takao
1
☆著者の曽祖父が主人公の桃中軒雲右衛門で、父親が超常現象研究家の中岡俊哉。2018/02/07
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