内容説明
海軍で海上護衛総司令部参謀をつとめ、シーレーン(海上交通線)確保の最前線に立っていた著者がその戦略を綴った護衛戦の貴重な体験記。現代日本の防衛を考える上でも欠くことのできない記録である。
目次
第1章 開戦計画における大誤算(開戦前)
第2章 国力かまわず前線へ前線へ(昭和16年12月から同18年8月まで)
第3章 戦争指導の転換期(昭和18年9月から同年11月まで)
第4章 「海軍に二大戦略あり」(昭和18年12月から同19年2月まで)
第5章 決戦準備の輸送、資源蓄積の輸送(昭和19年3月から同年5月まで)
第6章 崩れ去る夏の陣(昭和19年6月から同年8月まで)
第7章 南方ルート臨終記(昭和19年9月から同20年3月まで)
第8章 日本本土完全封鎖(昭和20年4月から同年8月終戦まで)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シャル
9
足りぬ足りぬは工夫が足りぬ。いや足りぬはもっと根本的だ。第二次世界大戦での日本が、いかにしてジリ貧となり、苦しみ、敗戦を迎えたのかを、後方から戦略を俯瞰することで浮き彫りにしている。島国である日本の国力の土台を支える海上輸送、それを保ち続けることの重要さと、おろそかにすることで待ち受ける危機。そしてそれを修正しようにも、初戦の勝利による慢心と増長、希望にすがろうとする楽観のスパイラル、栄光と伝統による硬直が立ち塞がり、そこにアメリカの潜水艦もその勢力と技術を小拡大してゆく。戦争の作戦面の閉塞感に満ちた一冊2015/04/11
ライクロフト
7
物資を輸入しなければたちまち困窮する国であるにもかかわらず、当時の海軍は艦隊決戦主義で、海上護衛の重要性はほとんど顧みられなかった。重要性を認識できていたのは少数で、その声はなかなか届かなかった。先の大戦は、兵力ではなく国力とマネジメントで負けたのだとあらためて認識。日本軍の兵站軽視は海上輸送に限らないけど、これは昔話ではないと思う。今日においてもシーレーンの重要性をどれだけ理解できているだろう。今に通じる教訓を多数得られる良書。2019/06/10
仔羊
6
海上護衛総司令部参謀の大井大佐が実際に太平洋戦争中の物資の状況を窮々に綴った史実書(執筆は昭和28年)。海軍は最初アメリカの軍事力から戦争は反対していたが初期は快勝続きで当初の目的も忘れ慢心した結果、資源輸送の概念が消え失せて連合艦隊に固執していたために敗走に拍車がかかったのを解説しています。特に酷いのは潜水艦対策で仕方がないと考えたことで、何故放置していたと言いたい。制空海権を失って資源輸送どころでもなくなったのに何故まだ続けたと言いたくなるような惨状をミッドウェー以降特に上梓していました。2015/01/09
okaka
5
あかん、これはあかんですぞ。レイテがどうのマリアナがどうの言う以前に、土台を支えるリソースに対する危機意識がまったく埒外になっていたという点で、もう負けるべくして負けたのだといった感が。国を傾けるほどの海軍力がこの様な結末を迎えたとは、是非ともニホンスゴイの人たちに読んで欲しいところではあります。2016/09/24
北之庄
5
目的はやまと民族生存、その手段としての重要性から言えば、通商保護(海上護衛)→制海権確保→艦隊決戦のはず。しかしなぜか艦隊決戦思考に凝り固まる我が連合艦隊司令部。南方の石油資源地帯さえ確保すれば、充分アメリカにも対抗できるという、シーレーン、ロジスティックス無視の恐ろしく単純な発想。太平洋戦争がかくも無残な結果となったのは、またもや手段の目的化でありました。2014/10/09
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