内容説明
太平洋戦争は、日本にとっても世界にとっても悲惨な歴史であった。国家総力戦という、国全体を挙げての戦いは、「日本が敗れる」という形で幕を閉じたが、その中で、数々のドラマを生み、そして、多くの名言、迷言、暴言……を当事者たちに吐かせた。本書は、それらを、戦史から抜き出し、「言葉の背景」を軸にして、太平洋戦争を通観しようという試みである。盧溝橋事件を天皇に上奏する際、「事変は一カ月ぐらいで片付きます」とまったくの見込み違いを言ってしまった陸軍大臣・杉山元。 ドイツの快進撃に、「バスに乗り遅れるな」というスローガンを聞かされ、日独伊三国同盟に走った軍部。 「ガダルカナルってどこだ」と、事が大きくなってから騒ぎ出した参謀本部。 「墜とした家鴨の中に孔雀が一羽いた様だ」とアメリカ軍が言った山本五十六の戦死……など、戦史の中のリアルな言葉から綴られる事実は、迫力と情感を伴って心に訴えてくる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
大統領
2
勝っているときは気前のいいことを、負けているときは不利を誤魔化すために美辞麗句を用いていた日本。それだけにたまに"バカヤロウ"というストレートな言葉が出てくると悲壮感が際立つ。勇猛な長勇中将が"カァチャン、恐いよう"と寝言を言って自分の最期を悟った同僚の話が印象的だった。軍人でさえ相当なプレッシャーだった戦争を国民たちに強いていたとは。2024/11/06
竜王五代の人
2
著者の遺作であり、大木毅先生が補っている部分がある。目次に挙げられた節ばかりでなくその下の小節の多くも歴史に残る言葉で立てられているが、選択はいずれも素直なもので(文学からとったものが多少は目につくか?)、つまりは平凡な太平洋戦争史である。印象に残ったのは香港攻略戦の英雄でガダルカナルで戦死した若林東一中尉のエピソードで一節が立てられていること。兵から士官学校へ引き上げられたのだから相当な能力を持った人材だったわけだ。2022/03/24
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