内容説明
平和と繁栄を極めた古代ローマ。そこに溢れる過剰な欲望と、淫靡な乱行の裏には、どんな意識が潜んでいたのだろうか。そして、そうしたいとなみを「頽廃」や「堕落」と断罪する感性は、どのように生まれてきたのだろうか。「性愛」と「結婚」、そして「家族」をめぐる意識の変化は、人々の規範をどのように規定し、社会を変容させたのだろうか。社会の変貌の底にある「愛」と「性」のかたちを描き、歴史の深層をとらえる。(講談社学術文庫)
目次
1 この世は恥辱と悪徳に満ち満ちている(アウグストゥスの娘 ユリアの放蕩 ほか)
2 相異なる顔をもつローマ人(二つのローマ キケロの時代と社会―自由闊達・質実剛建の時代 ほか)
3 表象と心象―歴史の逆説(ホラティウスの冷笑 マルティアリスの嘲笑 ほか)
4 「結婚」と夫婦愛(カエサルは妻に愛をささやいたか 「姦通」は家の汚名 ほか)
5 「自分を見つめる心」と道徳(ある市民の独白 「読み書き能力」について考える ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
そらのひつじ
6
古代ローマにおける性愛観がテーマ。文献資料やポンペイの壁画から、古代ローマ人の性愛のあり方受け取り方が、生々しいほどリアルに読み出せるとは、面白い。 長きにわたるローマ時代のなかでの性愛観の変遷に注目した視点も興味深く、このような観点からの歴史も面白かった。2014/07/14
たかみりん
6
帯の煽りは「カエサルは、妻に愛をささやいたか?」。答えはさておき、本書では「悪徳と恥辱に満ちたローマ人」という広く人口に膾炙したイメージの元となった帝政初期から五賢帝の時代にかけてのローマ人の心性を、恋愛・結婚といった愛の事象を中心に解説する。風刺詩人達が性風俗の乱れへの怒りを露わにする時、そこには性を汚れと感じる感性の芽生えと同時に、夫婦愛に基づく家族の絆を尊重する観念が産まれている。それは内なる魂への眼差しの始まりであり、後のキリスト教の発展にも大きく関わってくるという指摘が興味深い。2014/05/29
さとちゃん
5
1999年に「ローマ人の愛と性」として刊行され、2014年に改題、出版されたもの。副題の「変貌する社会の底流」が効いている。「ローマ社会において家族はいかなる姿をとっていたのか」なんて、本書で問いかけられるまで突き詰めて考えたことはなかった。貴族階級なのか奴隷なのかで「家族」の姿は違うだろう、くらいの認識でしかなかった。フェリーニの「サテリコン」に始まりフーコーのまなざしまで語る本書。読み応えありました。2025/04/26
Haruka Fukuhara
5
すごいテーマで本を書くなぁ。悪女&変態皇帝の性の話など。こうした風紀の乱れがキリスト教の倫理が要請される背景になったとか。2017/05/03
刳森伸一
5
古代ローマの性愛を中心に、当時の世相の変化を問い直す。所々強引だなと思うところもあるけれど、性愛や結婚観などの変化がキリスト教の下地になって行く様子を描くところは刺激的だった。途中に挿入されている市民の独白はやけに現代的な感性だなと思っていたら、作者による創作だった。現代人と当時の人の感性には上手く言葉に出来ないがやはり隔絶した何かがあるようだ。2015/02/26
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