内容説明
五木寛之が日本史の深層に潜むテーマを探訪するシリーズ「隠された日本」の第2弾。九州には、かつて一向宗が禁じられ、300年もの間の強烈な弾圧に耐えて守り続けた信仰、「隠れ念仏」の歴史がある。それに対して東北には、信仰を表に出さず秘密結社のように守り続け、「隠す」ことで結束した信仰「隠し念仏」がある。為政者の歴史ではなく、庶民の「こころの歴史」に焦点を当て、知られざる日本人の熱い信仰をあぶり出す。
目次
第1部 「隠れ念仏」と知られざる宗教弾圧(民衆が守り抜いた「隠れ念仏」 民衆の捨て身の抵抗運動 かつての日本にあった「魂の共同体」)
第2部 「隠し念仏」が語る魂の鉱脈(東北の隠された魂「隠し念仏」 『遠野物語』に秘められたもの 宮沢賢治の宗教心)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
46
九州と東北、列島の北と南を禁じられた念仏というキーワードを元に考察した一冊。九州の方は禁制とされた浄土真宗とそれを水面下で守る人々、本願寺との繋がり等。公の社会とは違ったもう一つの共同体というのは、著者の初期の傑作『戒厳令の夜』を思い起こさせる。今までほぼ知らなかったカヤカベ教については特に興味深い。念仏への信仰を中心とした吸収とは打って変わって、東北の方は隠し念仏を包括する東北論といった意味合いが大きいように思える。特に遠野物語、宮沢賢治と個人的に大好きな事が書かれた部分からの東北観が面白く読めた。2014/06/30
ROOM 237
15
遠野物語にはリアルなエロ話がない…と嘆く五木さんによる、隠しと隠れ双方の成り立ちから現在までをフィールドワークしつつ辿る一冊。真宗禁制や廃仏毀釈など、基本知識ゼロの私にも解らせた上で更に興味湧かせる手腕よ。戦国時代から明治までの300年に渡る禁制と弾圧の中をどう死守したのかが読みどころで、当時としては身分関係なく組織化したのも異例だし隠し通すところに宗教の本質を見た。最も興味深かったのは旧薩摩藩のカヤカベ教で、30年前までは取材タブーだったというから驚く。2022/12/29
LUNE MER
14
歴史を考えるとき、自分は学者でもなんでもないので、学術的な意味での厳密性よりも感覚を大切にしたくなってしまう。エビデンスもなければ、必ずしも論理的でないかもしれないけど、きっとそうだったに違いないと思える感覚の方を。本書でも、おそらく教科書では知ることのできない歴史の一面に触れることができる。遠野物語の功罪についても、賛否はあれど新たな視点を示してもらった。宮沢賢治についても、トルストイとの類似性(恵まれた自身と貧しい農民とのギャップに起因するコンプレックス)など、視界が広がった。2020/06/17
遊々亭おさる
11
「日本人は、じつはものすごく宗教的な国民だと思う。」逆説的な一文から始まる本書は、時の権力者からの苛烈極まる弾圧を逃れるため、『隠れる』ことで信仰を守り通した歴史に名を残すことなき民草の視点から綴る日本人と信仰の考察の書。似て非なる『隠れ』と『隠し』の違いはもとより、昔話や伝承のまとめである『遠野物語』からエロティックな描写が抜け落ちている謎の推理や宮沢賢治とキリスト教に共通する思考の限界点の考察など、史実を軸に据えた小説家の豊かな洞察力を味わう一冊。日本人の信仰の根元はキリスト教に負けず劣らず熱いのだ。2016/06/29
moonanddai
10
「隠れ念仏」とは何か、「隠し念仏」とはいかなるものかといった学術書というより、地下に潜った宗教に日本の文化の多様性といったものを見ようとした文化論といったほうがいいか。作者は取材を通して「『ひとつの日本』から『いくつもの日本』へと視点を転換」とか「「米で統一された『ひとつの日本』という幻想」とかいう。何となく網野氏の著作を彷彿させる(ただ参考文献に網野氏の著作は無かったが…)。それにしても「遠野」の柳田や地元岩手の宮沢が、隠し念仏を忌避したのはなぜだろう…。土着性を後進的なものと感じたためなんだろう…。2024/01/04
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