内容説明
若手日本史学者が軽やかなタッチでものした、まったく新しいライヴ感あふれる日本通史が登場! 高校生レベルの知識だけを前提にしながらも、次々と日本史の常識がくつがえされ、「真説」が提示されます。全体を貫くキーワードは「西洋化」でも「近代化」でもなく、「中国化」と「再江戸時代化」。教科書の常識とアカデミズムの行儀よさを突き抜け、いまの社会にも役に立つ「日本史」を再構築する著者の才気が本書には横溢しています。これぞ、右も左も驚愕の「本当に新しい歴史教科書」なのです。宇野常寛氏との特別対談も収録。
目次
第1章 終わっていた歴史―宋朝と古代日本
第2章 勝てない「中国化」勢力―元・明・清朝と中世日本
第3章 ぼくたちの好きな江戸―戦国時代が作る徳川日本(17世紀)
第4章 こんな近世は嫌だ―自壊する徳川日本(18~19世紀)
第5章 開国はしたけれど―「中国化」する明治日本
第6章 わが江戸は緑なりき―「再江戸時代化」する昭和日本
第7章 近世の衝突―中国に負けた帝国日本
第8章 続きすぎた江戸時代―栄光と挫折の戦後日本
第9章 「長い江戸時代」の終焉―混乱と迷走の平成日本
第10章 今度こそ「中国化」する日本―未来のシナリオ
特別対談 「もうひとつの日本史」の物語(宇野常寛×與那覇潤)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nnpusnsn1945
57
話が飛躍したり、こじつけかな?と思う所もある。とはいえ、語り口は平易で、観点もおもしろい。日本は中国近世と江戸時代をごった煮にした統治方式になるらしい。戦前の日本は社会主義国や、江戸時代と北朝鮮の類似性は言い得て妙である。また、北朝鮮嫌いの人間が目指す国のあり方が皮肉にも北朝鮮であるのも妥当である。著者の冷静な論調が気に入ったので、他の著書もあたりたい。2021/07/22
ころこ
37
左翼的な史観かと思いきや、新たな時間軸からみて、従来の右翼左翼の対立自体を批判しています。「中国化」とは、権力を一元化し、自由化の徹底により、競争により流動性の高い社会をつくることです。何てことはない、アメリカ新自由主義とほぼ同義です。ところが、日本社会の別名「再江戸時代化」を対置したときに、その成り立ちとその問題点を「中国化」がより炙り出してくれるようにみえるのは不思議です。「中国化」とは要するに近代化なので、西洋近代化を相対化し、あり得た別の近代化の可能性を探ることで、日本社会の再生を考察します。2019/12/27
k5
26
面白かったです。歴史学というのは少なくとも面白くなるための努力をしてきたんだなあ、と。與那覇さん、学生時代に少し面識があるんですが、自分含めて文学畑だった人がたいして面白いこと言えてないのを思い知らされます。元寇で国が滅ぼされるなどあり得ないのに、「国難国難」と言って国民を戦争に追い込んだ無能な軍閥政府というのがご時世的にキャッチーでした。もちろん安倍政権ではなく鎌倉幕府ですが。2020/03/08
masabi
19
【要旨】「中国化」「再江戸時代化」の概念を用いて日本史を描く。【感想】内容自体はおもしろいのだけど筆者の独特な語り口に戸惑った。日本史を宋代モデルのグローバル化と日本の村社会化がせめぎあうという図式に落とし込んでいる。筆者はどちらも優劣はないとは言うが中国化の立場でいるような書きぶりだ。世界史や日本史でも問いの立て方が変わったようでこれらの概念を追いかけていきたい。ようやく世界が中国に追い付いたのだ。2017/11/11
ま
16
タイトルに見事に釣られてしまったが面白く読めた。日本史を「中国化」あるいはそれを拒否する「再江戸時代化」の対立軸で捉え直す試み。こんな見方があるのか~と感心する一方でこの二分法は少し乱暴なのではという気もしないでもない。常識が破壊される感覚が、著者の語り口と相まって痛快な本。著者が結構若くて驚く。2021/06/11