内容説明
高潔な人格の大学教授は、ごく少数派。大学は嫉妬と足の引っ張り合いの世界。大学院の犠牲になってはいけない。未来ある若者は、討ち死にせずに生き残ることを考え、「勝利」するのではなく、「敗北」しないように兵站戦(ロジスティク)を巡らさなければならない。
文科省の推進した「大学院重点化」により、日本の学術レベルは飛躍的に向上した? 否、大学院の乱立により、むしろ多くの若者が人生を狂わせているのだ。本書は、大学院生が直面せざるを得ない危機を回避し、学問とともに歩むための「道しるべ」だ。「道しるべ」といっても、大学院という小さなムラ社会での「当たり前」のことを書いているにすぎない。ところが、この「当たり前」のことがわからず、理想と現実のギャップに引き裂かれ、屍となって消えてゆく大学院生がたくさんいる!
目次
第1章 大学院への「入院」
第2章 希望のない国
第3章 博士号への道
第4章 留学のすすめ
第5章 英語攻略法
第6章 留学対策編
第7章 技術編と現代科学
第8章 博士論文作成術
第9章 論文投稿術
第10章 学問と政治
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
みっくん
38
大学院を取り巻く状況に対する恨み節からの、題名通りの(大学院内での)生き方至難。皮肉が軽妙で『自分の苦労は他人の肥やしにしかならない。』『苦労をして立派な人格を形成することができる人は、一割か二割だろう。残りの八割は、性格が崩れてゆく。』には吹き出したw崩れたのかな?ww2016/10/12
1.3manen
28
大学院の犠牲になってはいけない(6頁)。身につまされる言葉。東大で学位取り、2012年芥川賞の円城塔(えんじょうとう)氏は、「ポスドクからポストポスドクへ」を「日本物理学会誌」に投稿、CiNiiで読めるという(41頁)。後で拝読しよう。私もその昔非常勤講師をしていた頃がある。あれは何だったのか? 著者は指導教授を3人変更したという(57頁)。やはり、教授といえども、教授である前に人間であったのだ。覇権を理由にアメリカに留学する(66頁)というのには私は反対だ。 2014/11/08
ホシ
23
一気に読みました。2013年の本で少し古いけど実情は変わってないと思う。どんなに大変な思いをして博士号を取得しても食べていけない現状。人が使い捨てにされるのは学問の世界も変わりません。そして、捨てられる理由も「本人の努力不足」で片付けられてしまいます。「便利であることは品がない」とある本で読みしたが、使い捨てが蔓延した日本は品を失って久しいですね。完膚なきまでに敗北しないと日本は自ら変わらないと著者は説きますが、深く共感しました。能力ある研究者が生き生きと活躍できるようにしなければ日本は確実に沈没します。2020/04/12
Arisaku_0225
17
「き、希望はないんですか?」と思わず言ってしまうほど、博士号を取得する道は険しく、また取れたとしても1寸先は闇のような状況で足がすくむ。院進するものがどんどん狂っていくのか、それともそもそも狂人が院進するのか……。本書は大学院生版自己啓発書みたいな感じで指導教官選びから論文執筆術までを強い語気で示している。しかし、本髄はそんな小手先のメソッドではなく、「なぜ院進しなければならなかったのか」と「失敗したとしても、笑っていられるか」を何度も自分に問い続けることが必要なのだと思わされた。2024/07/28
kubottar
10
文系大学院生はどこに就職するのか?その謎がわかります・・2014/06/15




