内容説明
大叔父が遺した博物館は、時間旅行の秘密の実験場だった。天涯孤独になった勇介は、過去を彷徨う大切な人の魂を救うため、危険な旅路に出る。パートナーは碧い瞳の不思議な学芸員枇杷。「命綱」は堅くつないだ手。この手が離れれば二度と現代には戻れない。過酷な旅が今、始まる。新感覚ミステリー長編。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
るーしあ
113
初野晴らしい、やわらかみのある独創的なファンタジー。しかし特殊能力のタイムトラベルは、残念ながらうらやましくともなんともないシロモノ。独自のルールにあまりにも行動が制限されている。一応謎解きもあるが、まさに手品の種明かしのごとく軽い内容。ミステリーとして多大な期待はしないほうがいい。この作品はこういう世界だと割り切って読み進めるしかない。長編で引っ張る内容とも思えないだけに、もう少し色々な時代を旅してほしかった。2014/09/25
しのぶ
84
タイムトラベル能力を使って魔女狩りの時代に飛んでしまった精神を助け出そうとするファンタジー系作品。勝手に短編連作と勘違いしたが1冊丸ごと1案件。自分が歴史に詳しくないからか内容が難しく感じる部分が多かった。また脳死や魔女狩りなど扱っているテーマの為か途中の描写が何とも辛く厳しく重苦しい。2017/08/21
スカラベ
66
裏表紙の内容紹介の出だしが、「大伯父が遺した博物館は、時間旅行の秘密の実験場だった。」これはタイムトラベル好きとしては読まないわけにはいきません。しかし本書の内容は、マシンが出て来ていろんな時代を飛び回るといった類の話ではない。時代はヨーロッパを席巻した「魔女狩り」の頃に固定され、魔女を炙りだすための奇跡と呼ばれる『マジック』の種明かしに焦点があてられている。又、体ではなく意識がその時代へ飛ぶというちょっと異質な設定。時間を遡ることを軸とする話なのかというと疑問も残るが主人公たちの懸命さにはちょっと感動。2014/07/30
まりも
60
大叔父が残した博物館を受け継ぐ事になった少年・勇介が、過去を彷徨う大切な人の魂を救うために、パートナーの枇杷とともに二度と戻れないかもしれない時間旅行に挑む話。色々なジャンルが入り混じっているため、読み始めた当初は戸惑いましたが、作品の持つ独特な世界観と魅力にあっという間に引き込まれ読了する事が出来ました。イマイチ納得できない部分もあったけど、こういった作品は好きですね。血なまぐさく悲しい歴史とボーイ・ミーツ・ガールが合わさった良作だったと思います。もう少し盛り上がり要素があれば最高だったかな。2016/02/07
ちょこまーぶる
58
時々、?となる一冊でした。脳死状態の身体から精神が分離されて、過去にタイムトラベルするという話なんですが、その旅が過酷で謎に包まれていたことには楽しめました。でも、魔女裁判の時のトリックを解明する話には、ちょっと???が続いたことに、理解力が低い自分に残念な思いをしました。そして、歴史は変えることができないという現実に葛藤しながら現在に戻ってきたことにほっとしました。読後には脳死状態の時の精神って、この話のように時間旅行をしているんじゃないかと思うようになりました。自分の人生の彷徨い人となるのかもなぁ。2022/06/28