内容説明
【第144回直木賞受賞作】御一新から10年。武士という身分を失い、根津遊郭の美仙楼で客引きとなった定九郎。自分の行く先が見えず、空虚な中、日々をやり過ごす。苦界に身をおきながら、凛とした佇まいを崩さない人気花魁、小野菊。美仙楼を命がけで守る切れ者の龍造。噺家の弟子という、神出鬼没の謎の男ポン太。変わりゆく時代に翻弄されながらそれぞれの「自由」を追い求める男と女の人間模様。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
337
時は維新後10年ほど。武士の身分を失った定九郎は、遊廓の客引きという職を得たのだが、、、。そこに働く人々や、定九郎の兄、ひいてはお江戸中の混乱が、川底を流れる漂砂になぞらえて語られる。定九郎のダメダメっぷりにひき比べ、花魁の小野菊のオトコマエさが際立つ。気っぷのいい江戸弁、流れるような日本語、著者の個性をじゅうぶんに感じさせる作品だった。2018/03/21
kaizen@名古屋de朝活読書会
138
直木賞】自分が苦手な時代物。舞台となる根津という地名は最近よく地下鉄で下りるので覚えた。上野と本郷の間。参考文献が沢山あるのはすばらしい。苦手な文献が多いのでちょっと小休止。参考文献一覧作成2014/03/23
ふじさん
109
直木賞受賞作。御維新から10年、御家人の次男坊の定九郎は出自を隠し、根津遊郭で働いている。花魁、遣手、男衆たちは、時代に翻弄されながらも、谷底で生きる男と女を描いた作品。この苦界から抜け出したと苦悶しながらも、決断できない定九郎の弱さがなんともやりきれない。逆に、花魁の小野菊の生き様が際立つ、最後に救いが待っている。後半には、様々な人々の思惑が交錯し、ミステリー的な要素も加わり、時代描写も巧みで面白さを増す。2024/03/14
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
109
平成22年下期直木賞受賞作。明治維新から10年、武士という身分を失い、根津の遊郭の客引きとなった定九郎。郭の中の妓に己の姿を透かし、その正体もまだはっきりと現さない『自由』というものを求め、あるいは恐れ、戸惑い葛藤する姿を描く。明けたばかりの新たな時代の川底では、定九郎のようにそんな時代に翻弄されつつも、砂粒が静かにそして力強く動くかのごとくゆっくりと流れてゆく。今更ながら初めて読む作家ですが、美しい文章の中にも実力のほどがうかがえると感じました。他の作品も是非、読まないと♪2018/02/12
エドワード
109
根津は馴染みのある街。数々の風雅な建物は昔の遊郭の名残だ。東京帝国大学が出来るまでこの地にあった遊郭の物語。明治維新から十年。旗本の次男だった定九郎は、出自を隠し、根津で一番の美仙楼で店番をしている。江戸の人々にとって、維新は大瓦解だった。武士は職業ではない。生き方を変えられない者は落魄する。遊郭にも「学問のススメ」が現れる。士族の乱、民権運動、事件が次々と描かれ、価値観が乱れ、実に混沌を極めた時世をあぶり出す。自由とは何だ。籠の鳥である花魁の小野菊は問う。それは圓朝の落語の如き夢幻の世界の言葉のようだ。2015/11/07




